実務の高度化・専門職化で求められる、実務家教員

前回は、社会的要請から新しい知識の形式として「実践の理論」の必要性、そして、「実践の理論」の担い手としての実務家教員の役割を説いた。今回は、実務家教員から誰が学ぶのかという観点から論じていきたい。

実務家教員から誰が学ぶのか

実務家教員から誰が学ぶのか。それを紐解く鍵は、実務家教員が何を教えるのかにある。前回取り上げた「実践の理論」を実務家教員は教えていくことになる。実務家教員が活躍する場として想定されるのは、大学はもちろん、専門職大学院や専門職大学、専門学校の職業実践専門課程などが挙げられる。これらに共通することは、「高度専門職業人」あるいは「専門職業人」を育成することが念頭に置かれている。両者は程度の差こそあれ、「専門職(プロフェッション)」を指しているといって良いだろう。

こうした専門職を目指している者はこれからその道に進もうとしている学生ということも考えられるが、社会人がキャリアチェンジやキャリアアップを目指している場合もあるだろう。実務家教員は「専門職」をこれから目指そうとする人々に対して、これまでの知見を教えていくことになる。したがって、実務家教員はリカレント教育の担い手にもなりうることになる。

そもそも専門職とは

実務家教員が「専門職」養成の担い手になりうるということは、「専門職」とは何かを一度は考えなければならない。実務家教員と専門職の関係性は深い。というのも、実務家教員として浸透している分野として挙げられるのは、法学(法科大学院)や教職(教職大学院)など一定の専門性が求められうる領域だろう。しかし、以前に指摘したように様々な分野の実務家教員が求められている。例えば、ビジネススクール(MBA)でも当然ビジネスに関する高度専門職業人を養成している。それらの共通点は何だろうか。より詳細な議論はこれからの論考に譲るとして、次の点を主張しておきたい。

実務家教員と専門職は、ある意味で「卵が先かニワトリが先か」という構造になっている。ある領域を専門職化していくためには、実務家教員による「実践の理論」に基づいた教育が必要になる。また専門職化された領域であれば、その道のプロである実務家教員が必要になる。今後、様々な領域で実務の高度化が進むのであれば、それぞれが専門職化することになる。したがって、実務家教員の役割はこれからの専門職をつくっていく(自身の領域を専門職化していく)ことにもなるのだ。

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