島根県邑南町 起業する人が続出、過疎の町を変えた公務員の挑戦

人口約1万人、高齢化率43%の山里で起業する人が続出し、次々と飲食店がオープンして、年間90万人もの観光客が訪れる。町の変化を牽引したのは、公務員の寺本英仁氏。ネイティブ主催の「地域で起業家・専門家を目指す」イベントに登壇し、その取り組みの軌跡を語った。

寺本 英仁(邑南町 農林振興課 食と農産業戦略室 調整監)

島根県邑南町(おおなんちょう)が「A級グルメのまち」を目指した取り組みをスタートしたのは、2004年。その背景には、町役場で働く寺本英仁氏の苦い経験があった。当時、寺本氏は地元産品の販路を東京に求め、年間200頭限定で生産される『石見和牛』を一流ホテルへ売り込んだ。品質は評価されたが、そこで言われたのは「2週間で200頭」のオーダー。量的にとても対応できる話ではなかった。

「人口1万人の町で、東京に特産品を持っていくのは無理だと感じました。でも逆転の発想で、地元で消費すれば、少量生産というデメリットをメリットに変えることができると思い付いたんです」

邑南町には、石見和牛のほか、高原野菜など数々の素晴らしい食材がある。それらを「A級グルメ」として、邑南町でしか味わえない逸品として売り出すことにしたのだ。2011年には、「A級グルメ」の発信拠点として地産地消の里山イタリアンレストラン『ajikura』がオープンしている。

中国山地の中央部に位置する邑南町。豊かな自然と食資源に恵まれている

地産地消の里山イタリアンレストラン『ajikura』。「A級グルメ」の発信拠点になっている

地域おこし協力隊制度を活用

地産地消を進めるためには、農家と料理人をつなげればいい。そう考えた寺本氏は、早くから地元で料理人を育てるというアイデアを温めていた。

また、『ajikura』のようなお店を増やしたくても、人口の4割が65歳以上の町ではスタッフを集めることも難しい。寺本氏は外から人を呼び込み、起業・開業する人を増やすことを考えた。しかし町の財政は厳しく、予算が豊富にあるわけではない。そこで目をつけたのが、地域おこし協力隊制度の活用だ。

地域おこし協力隊とは、1~3年の任期で、地域外の人が自治体の委嘱を受け、その地域に移住して活動する総務省の制度だ。自治体の資金負担は原則ゼロで、1人当たり400万円を上限に国から自治体に補助金が交付され、それが隊員の活動資金や給与になる。

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