人口4000人の町に最先端の学びを 地域を変える学びのデザイン

コーネル大学で10年間研究者として活躍した瀬戸昌宣氏は、次の活動の場として、血縁も地縁もない高知県土佐町を選んだ。人口約4,000人の中山間地で、瀬戸氏が取り組むのは、全く新しい教育のデザインだ。

瀬戸 昌宣(NPO法人SOMA代表理事)

SOMA(ソマ)は、高知県土佐町で教育事業を展開するNPO法人。子どもから高齢者までが集まるコワーキング・コスタディスペース「町の学舎あこ」の企画運営や、学校教育支援、林業を中心素材とした教育プログラム「杣の学校」構想などを展開している。

「子どもから大人まであらゆる人の"育ち"に静かに寄り添いたい」と話すのは、SOMA代表理事の瀬戸昌宣氏。ほんの2年前まで、アメリカでバリバリの研究者として活躍していたという異色の人物だ。

アメリカで実感した「教育の力」
研究者から教育者へ

瀬戸氏は1980年東京生まれ。世界を舞台に活躍する研究者の父に影響され、「自分もいずれ研究者となり海外で生活する」と、当たり前にイメージしていたという。高校・大学では海外留学を経験、2006年からアイビーリーグのひとつであるコーネル大学(ニューヨーク州)に留学し、農業昆虫学の博士号を取得。その後も2016年まで博士研究員として研究に従事した。

「研究環境はタフだったけれどやりがいがありました。しかし、それ以上に面白かったのが地域教育でした」

昆虫学科のオープンハウス(公開授業)の運営に関わり、900人規模のイベントを3,500人規模に拡大。また、読書活動や地元学校への出前授業にも積極的に関わった。さらに、学生会の会長を務め、大学の実験圃場で栽培したりんごの加工品販売の収益を活用した奨学金制度を創設したという。

「オープンハウスなどをきっかけに、地元の中高生が昆虫学科に憧れて入学してくることもあり、すごく嬉しかったですね」

こうした教育活動は、大学が立地するまちにも驚くべき変化をもたらした。評判を聞きつけて小中学生の子どもを持つ家庭の移住が増え、移住者がまちに新しい産業を起こしていったのだ。2006年に中心市街地の雇用は約700人だったが、2016年にはその2倍以上の1,500人に増えた。

教育をトリガーに、まちが大きく変わる。それが瀬戸氏の原体験になった。

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