コンサル時代の「苦しみ」が着想 2000社導入のマニュアルサービス

人手不足が深刻化している今、あらゆる企業にとって人材育成の効率化は喫緊の課題だ。ベンチャー企業のスタディストは、人材育成に不可欠な「マニュアル」の作成と共有にイノベーションを起こし、急成長を遂げている。

鈴木 悟史(スタディスト代表取締役) 

2,000社超が導入するサービス

人材教育・育成サービスとして、ここ2年で3倍に導入件数を伸ばしているサービスがある。スタディストが提供する、マニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」だ。

Teachme Bizは画像や動画ベースのマニュアルをクラウドで配信できる

マニュアル=書類というイメージが根強いが、Teachme Bizは画像や動画ベースのマニュアルを、クラウドで配信できるのが特徴だ。撮影した写真を選び、画像を編集し、テキストを入力するという作業を繰り返すことで、簡単にマニュアルが作成できる。これをクラウド上にアップすれば、従業員はスマートフォンやタブレットで時間や場所を選ばず閲覧できる。

「人手不足だからこそ人材育成を効率化したい」「外国人でも直感的にわかるマニュアルが欲しい」といった時代のニーズを捉え、2013年9月にサービスを開始してから5年間で、導入社数は2,000社超。大企業だけでなく地方の中小企業や海外にも広がる。

興味深いのは、シンプルなサービスに見えて、国内外に目立った競合がいないこと。その理由を尋ねると、スタディストの鈴木悟史代表は苦笑しながら教えてくれた。

「マニュアルという言葉にネガティブな印象はありませんか?少なくともクールではないですよね。だから日本でもアメリカでも誰も手を付けなかったのでしょう。私は実際にマニュアル作りで疲弊した経験があるから、その課題と可能性を発見できたのです」

作れども使われぬマニュアル

鈴木氏は明治大学大学院卒で建築学を専攻。当時登場した3DCADの可能性に魅了され、設計に没頭した。しかし、いざ就職活動となると建築業界は不況の真っ只中。そこで目先を変え、金型業界のイノベーターとして注目を集めていたベンチャー企業、インクスに就職した。

「試作金型製作サービスや製造プロセス改革コンサルティングを手がけ、3DCADを駆使する会社でした。オフィスには、大学に1台しかない最新コンピューターがいくつも並んでいる。『これはすごい!』と入社を決めました(笑)」

数年後にはエンジニアからコンサルタントへと転身。20代にして、誰もが名前を知るような大手企業に製品開発プロセス改革を提案する立場になる。

この頃の経験がTeachme Bizの着想につながった。いざ採用が決まると、システムを組むだけではなく、使用方法を含めた詳細なマニュアルを作成しなければならない。膨大な情報量のマニュアルをワードやパワーポイントで提出するのだが、鈴木氏にはそこにある種の虚しさを感じていた。

「誰も見ようとしない、ほとんど活用されることのないマニュアルを、なぜ自分は膨大な手間と時間をかけて作っているのだろう」

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