市民参加型で被災地情報を把握「オープンストリートマップ」
災害時に地図は欠かせない存在だ。しかし、幹線道路が通れなくなったり、目印にしていたビルが崩壊したり、既存の地図が一瞬にして役に立たなくなることもある。市民参加型プロジェクト「オープンストリートマップ」は、被災地の地理情報をいち早く共有できるツールとして注目を集めている。
2013年10月、伊豆大島(東京都大島町)で大規模な土砂災害が発生した。復旧・復興に向けて奮闘するなかで、とある工場には取引先から取引停止の申し入れがあった。取引先は報道を見て工場が操業停止と思い込み、既に新たな調達先を探していた。しかし、その工場は土石流を免れ、施設も人も無事。工場経営者は取引先に災害情報が書き込まれた地図を見せて、事業に支障がないことを説明し、取引を継続できたという。
このときに使用した地図が、青山学院大学の古橋大地教授が普及・推進に努める「オープンストリートマップ(以下、OSM)」だ。
「発災後は昨日まであった道が消えるなど、既存の地図が使えなくなることがありますが、避難行動や復興支援活動には現地が今どうなっているのか、即時情報が必須です。OSMは航空写真や衛星画像、紙地図など、トレース許可が得られた情報源を元に、全世界の『マッパー(マップ作りのボランティア)』が地図に反映する仕組み。情報が受取れれば、被災地の地理情報をほぼリアルタイムで更新が可能になります」
実は、伊豆大島では同年1月にOSMの体験型イベントを開催していた。このイベントのおかげで、古橋教授をはじめとする国内の主要マッパーが町の地理を把握しており、現地でもOSMへの理解があったため、情報更新がスムースになされた。件の工場経営者が使ったOSMの地図には土石流の爪痕がくっきりと描かれていた。
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