最先端の感震ブレーカを進化 2段階の遮断で電気火災を防止

電力を2段階で遮断する「住宅用感震総合システム」で国土交通大臣賞を受賞。安心・安全な暮らしに貢献する、河村電器産業の製品開発へのこだわりを聞いた。

地震の揺れによって電気ストーブの上に衣類が落ち、それが火災の原因に――こうした形で電気器具などから発生する「電気火災」の危険性に、いま関心が集まっている。電気火災を未然に防ぐために、どのような技術や製品を生み出すべきか。生活する人の視点に立って製品開発に取り組んでいるのが、電気の保安・制御のパイオニアメーカー・河村電器産業である。同社が現在開発中の「住宅用感震総合システム」は、JECA FAIR2015(第63回電設工業展)の製品コンクールにおいて国土交通大臣賞を受賞。過去10年のうち3回目の同賞受賞を果たし、10年連続の入賞を達成した。

災害時の相反する課題を解決

河村電器産業は従来から、地震の検知から一定時間(3分間)後に遮断する住宅用感震ブレーカを製造してきたが、今回の住宅用感震総合システムではさらに機能を進化させ、「即時」と「一定時間後」の2段階で電力を遮断する仕組みを採用した。電気ストーブなどは地震発生後すぐに電力供給を止める必要があるが、すべての電力を一度に止めてしまうと、夜間の避難に必要な照明も使えなくなってしまう。従来の感震ブレーカが抱えていた2つの相反する課題を解決したことが、このシステムの最大の特長である。危険度の高い発火源を即座に遮断し、照明などは一定時間後に遮断することで、火災防止と避難時の安全確保を実現した。

このシステムでは、即時遮断の対象となるコンセントを自由に選んで設定することが可能。たとえば熱帯魚用の水槽にヒーターを使っているとしたら、電気ストーブと同じく保護の対象にすることができる。間取りやライフスタイルに対応できるカスタマイズ性は、画期的といえるポイントだ。「電気火災への具体的な対策として、現実に発生するリスクを最小限に抑える方法を考え、このシステムにたどりつきました」と、研究開発部の小西功次技師長は語る。

小西功次 河村電器産業 研究開発部 電子デバイス開発チーム 技師長

人や住環境に応じた設定が可能

ここで聞こえてきそうなのが、「わが家は高齢者がいるから避難に時間がかかりそう。避難の途中で照明が消えてしまう心配はないの」という声だ。実はこの点にもしっかりと対策が取られている。たとえば高齢者のいる住まいなら、照明などの電力が止まる時間を通常より長めの「5分」に設定。また、システムが反応する感度についても、耐震性能の高い住宅なら「震度6弱」、家具が転倒しやすく不安を感じるなら「震度5弱」に設定するなど、建物の状況に応じて調整することができる。

地震が発生するとまず、分電盤に搭載された感震ユニットが検知し、制御ユニットに信号が送られる。続いて、電気ストーブなどの直接の電源であるコンセントユニットに無線信号が送られ、即時遮断する。この信号送信に無線を使用している点が、大きなポイントだ。分電盤とコンセントをつなぐための専用の配線が必要ないので、既築の住宅に設置する場合でも工事の手間やコストを抑えることができる。また、感震ユニットが従来品と比べて60%コンパクトになったことも、大きな改良点だ。分電盤内のスペースを有効に使えるようになり、これまでより多くの回路を使用できるようになった。

一方、従来の感震ブレーカから引き続き搭載されている機能として、停電状態から復電した際の電気火災対策にも注目したい。地震が検知され停電が発生した時は、復電時に主幹ブレーカを即時遮断。復電を原因とする電気火災(避難中に電気ストーブなどが勝手に作動するなど)を未然に防ぐことができる。

住宅用感震総合システム

挑戦を後押しする企業風土

これまでにない機能を追求する姿勢によって、高い評価を得ている河村電器産業。同社の風土を象徴する取り組みが、毎年開催される社内のアイデアコンクール「iフェスタ」である。研究開発部門に限らずすべての部署の社員が応募可能で、新製品・新技術のアイデアが毎回数百点も寄せられる。「現実には、応募されたアイデアが新製品として採用されるケースは少ないです。しかし、アイデアが生まれにくい環境からは画期的な製品は生まれません。部署の垣根を超えてアイデアが生まれる風土が、当社のモノづくりを支えています」と小西技師長。社員の挑戦を尊重する風土を守りながら、開発者として新しい製品を世の中に提案し続けたいと、力強く語る。

住宅用感震総合システムの今後の可能性として、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)との連動性にも触れておきたい。HEMSとは、電気の制御や「見える化」によって、効率的なエネルギー利用と暮らしの安心を実現するシステムだ。たとえば今後、HEMSの機能のひとつである高齢者の「見守りサービス」と住宅用感震総合システムを連携させれば、日常の安心と災害時の安全をひと続きのものとしてサポートすることが可能になる。従来の感震ブレーカの枠を越えた広がりが期待できるのだ。

電気の安心・安全に貢献する河村電器産業の姿勢は、大正8年(1919年)の創業以来一貫して受け継がれてきたものだ。安全に対するニーズの変化をキャッチし、その一歩先にある新技術・新製品を提案し続ける同社の取り組みに、今後も注目したい。

地震発生時の電気遮断の仕組み

お問い合わせ

  1. 河村電器産業株式会社 マーケティング統括部
  2. TEL:052-930-6384
  3. mailL:info_sales@kawamura.co.jp
  4. URL:http://www.kawamura.co.jp/

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