非常時の名簿情報の共有を可能に
高齢者や要介護者、障害者など自力での避難が困難で、地域全体で支えなくてはならない人の数が増えている。そうした人たちの避難をどう支援をするかも重要な課題の1つだ。
総人口に占める65歳以上の割合は、25.1%となり、今や4人に1人が高齢者だ。しかも、この割合はさらに高まる見込みで、2035年には、3人に1人が高齢者になると見られている。(平成26年度版「高齢社会白書」)
若い世代に比べ身体能力が劣る高齢者は、災害の犠牲者となるリスクも高い。実際、東日本大震災では、被災地全体の死亡者のうち、約6割が65歳以上の高齢者だった。また、高齢者同様に避難に支援が必要となる障害者も、死亡率が被災住民全体の死亡率の約2倍に上った。さらに、消防職員や消防団員、民生委員など、支援する側からも多数の犠牲者が出た。
避難時の要支援者名簿の作成を義務化
こうした教訓を踏まえ、平成25年には、「災害対策基本法」が改正され、「地域防災計画策定」とともに、「避難行動要支援者名簿」の作成が義務化された。それ以前も、内閣府が「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(平成18年3月)を作成し、各市町村に要援護者の名簿作成を勧めていたが、「法的な裏付けがなかったこともあり、全ての市町村が名簿を作成しているわけではなかった。また、名簿の情報を消防機関や民生委員らと共有し、避難支援に活用しようとしても、『個人情報保護法』がハードルとなり、情報の共有が難しかった」(内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(被災者行政担当)尾崎俊雄氏)。
そこで今回の改正では、各市町村に名簿の作成を義務付けるとともに、名簿作成に必要な個人情報を本人の同意がなくても内部で利用できるようにした。また、避難行動要支援者本人の同意を得て、平常時から消防機関や民生委員等の支援する側へ情報提供できるようにするとともに、災害の発生時や発生の恐れがある時には、本人の同意が無くても、名簿情報を避難支援等の関係者に提供できるようにした。
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