阪神・淡路大震災から20年 海外に学ぶ、日本の防災対策の盲点
阪神・淡路大震災や東日本大震災では、行政の復興活動や防災対策について数多くの課題が明らかになった。都市防災研究の第一人者である村上處直氏は、「人間中心」の防災対策の重要性を指摘する。
村上處直氏は日本で初めての民間の防災シンクタンク・コンサルタント機関である防災都市計画研究所を1970年に設立し、以来、日本の都市防災対策・研究をリードしてきた。現在では一般的になったコンビナート地帯の防災遮断緑地帯をはじめて提唱し、都市防災拠点の草分け的存在である白鬚東地区防災拠点再開発(東京都墨田区)の計画立案でも中心的な役割を担った。
阪神・淡路大震災では神戸市復興委員会の委員を務め、東日本大震災でも政府への復興ビジョン提起や被災地自治体の新たな防災計画立案に関わってきた。
お金を人・組織を動かす「歯車」に
過去の震災を教訓に、これからの日本の防災対策に求められる視点について、村上氏は次のように話す。
「まず復旧・復興期で一番大事なことは“お金”の使い方です。お金を、人や組織を動かす歯車としてとらえ、いかに一日も早く地元を元気にするかという視点から使うこと。それが日本にはまだ不足しています」
これを考える際に参考になるのが、海外での取り組みだ。一例が、米国カルフォルニア州における災害費用補償記録作成システム(大統領宣言災害に適用される)。災害が起こったときに、インフラなどの被害は現場判断で修繕・復旧工事を行い、経費はあとで請求できるというシステムだ。これをカルフォルニア州では、消防やインフラの部署だけでなく、すべての役人が使うことができる。当然、復旧のスピードは早い。
システムが活きたのがロマプリータ地震(1989年、マグニチュード7.1)。高速道路が約2kmに渡り倒壊したが、発災の翌日には、消防が救助活動をするのと同時並行で、地元役人が地元企業を使って道路の復旧作業を始めたという。
「高速道路管理会社や道路局が対応しきれない作業を現場判断でどんどん実行し、あとでお金がもらえるから地元企業は喜んで協力するし、元気になる。まさに、お金を歯車として活用した好例です。日本のように、壊れた建物やインフラを探し歩いて、評価し、入札して工事業者を決めるような復旧・復興とは次元が異なります」
お金を流通させることで被災地の小売業などが復興し、地域の経済も動き出す。カリフォルニア州では被災者に弁当の代わりにクーポンを配り、地域の商店街の再興に役立てた。クーポンを使い切れない高齢者たちは、ボランティアの若者にクーポンを分け与え、使ってもらったという。
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