その1杯が地域を変える 三次市の社会実験「かだいコーヒー」
広島県三次市にて、市民が日常の中で無理なく地域課題(ローカルイシュー)に触れ、関心を持つきっかけを作る実証実験「かだいコーヒー」が開始される。2026年1月20日(火)から2月20日(金)までの1ヶ月間、市内カフェ「喫茶キナリ」を舞台に実施される計画だ。
本プロジェクトの最大の特徴は、従来の「意識が高い層」向けのイベントではなく、誰もが利用するカフェという日常空間で「割引」をフックに無関心層へアプローチする点にある。発案者である「三次市みらい価値共創プロジェクト研究」の研究員、村尾直哉氏(同志社大学大学院 総合政策科学研究科 博士後期課程に在籍)は、自身の博士論文研究に基づき、「お得にコーヒーを飲みたい」という個人的な動機を入り口に設定した。来店客は、注文時に提示される地域課題に関する「問い」や「クイズ」に回答することでドリンク代の割引を受けられる仕組みとなっており、この体験を通じて市民の意識がどう変わるかを検証する。
提示される「課題」は、プロジェクトに参加する他のメンバー(課題提供者)が実際に関心を寄せているリアルな地域テーマが採用される。2025年12月に島根県浜田市で実施された際は、3社のメディア取材が入るなど注目を集めており、今回はその知見を活かした三次市での長期実証となる。
実証初日の1月20日11時からは「喫茶キナリ」にて、仕組みのデモンストレーションや発案者へのインタビューを含む取材機会も設けられている。日常の消費行動を社会貢献への一歩に変える本スキームは、地方自治体や企業が直面する「市民の巻き込み」という難題に対する新しい地方創生モデルとして期待される。
本実証実験は、2025年3月24日に広島県三次市(市長:福岡誠志)、スターライト工業株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長 西郷 隆志)、学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学(本部:東京都港区 学長:田中里沙)の三者が締結した連携協定に基づいて、同年7月に発足した「三次市みらい価値共創プロジェクト研究」の一環として実施される。
本プロジェクトは、1936年創業の技術開発型クリエイティブ企業であり、2024年に広島工場設立50周年を迎えたスターライト工業株式会社から三次市に寄附された、企業版ふるさと納税を活用して運営されている。同社は安全安心なまちづくりの実現に向けた価値共創を支援しており、こうした産官学の強力なバックアップ体制のもと、専門的な知見と地域の実情を融合させた新しい事業構想が「かだいコーヒー」として形となった。