座談会・脱炭素×シェアリングエコノミー 新事業の可能性

限りある資源を効率よく共有するという点で脱炭素に大きく寄与するシェアリングエコノミーだが、こうした価値を前面に訴求するサービスは少ない。"脱炭素"を起点にシェアリング事業を広げ、新事業を創出することはできるのか、業界団体・事業者とのディスカッションから探る

聞き手:織田 竜輔 月刊 事業構想 編集長

 

拡大の鍵は大企業参画と
消費者理解

――乗合で車の利用を減らすなど、シェアリングエコノミーは脱炭素に大きく貢献できるビジネスです。業界団体として、脱炭素関連でどのような活動をされていますか。

石山 当協会はプラットフォーム事業者を中心に2016年に設立されましたが、シェアリングエコノミーを「インターネット上のプラットフォームを介し、モノ・空間・移動・スキル・お金などを企業や個人が売買・賃借・提供する新たな経済の動き」と定義しています。世界経済フォーラムでは大量生産・大量消費・大量廃棄からの脱却手段として注目されるなど、社会を転換するビジネスモデルとして期待されています。国内でも『第五次環境基本計画』重点戦略のうち、グリーンな経済システム構築の項目で取り上げられています。当協会では環境省と〈COOL CHOICE〉で協業しており、官民協働で取り組む〈シェアリングシティ〉も拡大中です。

石山 アンジュ 一般社団法人シェアリングエコノミー協会 常任理事(事務局長兼務)

――シェアリングシティは2017年からの取り組みですね。

石山 シェアリングエコノミーを通じて地域課題を解決し、持続可能なまちづくりを目指す取り組みで、昨年3月時点で目標の100事例を1年前倒しで実現しています。ライドシェアの実証実験など、脱炭素につながる事例も増加傾向にあります。

――今後の広がりが期待されますが、さらなる脱炭素への貢献に向けた課題はありますか。

石山 本来シェアリングエコノミーが目指すのは、"生産しないし、捨てない"という姿です。その分、そこに新たな付加価値をつけ経済を回すという考えで、従来のビジネスモデルと異なることもあり、取り入れ方に迷うなどで"足踏み感"のある大企業の参画促進が、市場拡大と認知拡大に向け必要です。消費者の理解向上と価値観の変容促進も欠かせません。他人のものや中古品使用への懸念などに対し、私たちもよりさまざまな情報を発信していきたいと思います。

不便・もったいないの解消が
脱炭素につながる

――ここからは事業者の皆さんにもお聞きします。シェアリング事業での脱炭素の価値をどう捉えていますか。

工藤 私たちecboは、店舗の空きスペースなどを活用したスーツケースの預かり・宅配物受け取りサービスを手がけていますが、"脱炭素の価値"については文化的な要因が影響していると思います。私が以前在籍していたUberのライドシェアサービスは、米国で交通渋滞・CO2排出削減への寄与が社会的・文化的な評価を獲得し、事業化につながりました。国内では、脱炭素への取り組みは"大企業のCSR活動"というイメージがあり、欧米諸国に比べ社会的な広がりや関心、称賛に結びつきにくいと感じます。

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