2021年5月号
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脱炭素社会

脱炭素の促進へ「しくみ」を変革 新規参入者のアイデアが重要

安田 陽(京都大学大学院 特任教授)

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日本では2020年4月に送配電分離が実施され、電力関連の新ビジネスにチャンスが到来した。先行する欧米では、デジタル化が可能にした市場による需給調整で、再エネの利用を実現している。脱炭素の実現という目標に向け、社会のルールを変えていくパワーが新規参入者に求められる。

東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故から10年。日本の電力業界は、制度面での大改革を経験してきた。2016年には電力小売の全面自由化と卸規制の撤廃がなされ、2020年4月には送配電部門が法的に分離された。国内の再生可能エネルギーによる年間発電電力量の割合は2019年には2割弱となり、震災直後に比べるとほぼ倍の割合になっている。固定価格買取制度(FIT)により、再生可能エネルギー発電に参入する事業者が増えたことが背景にある。

一方、2020年末から2021年1月にかけて発生した電力不足のため、電力の安定供給は社会的な関心事となった。日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格が最高値を更新し、電気料金の請求が跳ね上がった消費者が出た。同時期に発生した米テキサス州の電力不足のニュースもあり、電力供給のシステムそのものに注目が集まっている。

安田 陽 京都大学大学院再生可能エネルギー経済学講座特任教授

このような状況下、脱炭素とデジタル化(DX)で新しいビジネスを構想したい人は何に注目すればよいのか。京都大学大学院の再生可能エネルギー経済学講座特任教授の安田陽氏は、「日本は後発者利益を得るために、海外の先例を研究すべき」と指摘する。

欧州は市場メカニズムで
再エネによる安定供給実現

「日本として実現したい姿」を検討する際の選考事例は海外にある。欧米では電力の需給調整は市場を通じて実施されており、再生可能エネルギーの利用拡大に一役買っている。中でも欧州の電力市場のメインプレイヤーはBRP(Balance Responsible Party、需給責任会社)と呼ばれており、将来を考える上で参考になる。日本で類似の役割を担うのは、バランシンググループ(BG)の幹事会社であり、最近流行りの言葉でいうとアグリゲーターやバーチャル・パワー・プラント(VPP)がそれに相当する。発電事業者・小売事業者と電力市場の間を仲介する組織だ。

電力市場とBRPの役割


BRPの役割の概念図。欧米の電力市場の詳細は、安田陽著「世界の再生可能エネルギーと電力システム[電力市場編]」(インプレスR&D)参照

同条件で地元出資率を変え、地域経済付加価値(RVA)を試算した。グラフは、毎年の付加価値額と地域付加価値率を示したもの。出資率が高くなるほど、地元に落ちる付加価値も増える

 

小規模太陽光発電や風力発電、シュタットベルケ(地域新電力)などの小規模発電・小売事業者は、単独で需給調整や市場取引をすることが難しいため、BRPがそれらの業務を代行する。BRPは、自身は発電設備などは持たないところも多く、さまざまな事業者と契約することで、バラエティーに富んだ電源を確保するとともに、手数料を得る。

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