2021年5月号
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脱炭素社会

TCFD開示から読む未来の姿 企業が連携して進める気候変動対応

瓜生 務(日本総合研究所 シニアマネジャー)

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近年の災害激甚化によるサプライチェーン分断のリスクに注目が集まり、複数の企業で気候変動対応に取り組む例が出ている。気候変動面での連携は新しいビジネスチャンスとなるかもしれない。投資家向けの各社の情報開示でも、サプライチェーンへの言及が始まっている。

瓜生 務 日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 環境・エネルギー・資源戦略グループ シニアマネジャー

菅総理は2020年10月の所信表明演説で、2050年のカーボンニュートラル社会の実現を宣言した。世界中で、同様の方針を打ち出す国は増えている。これをきっかけに、国内企業も脱炭素化に本腰を入れることになるだろう。ただし、産業が様々な企業で成り立っている以上、1企業が脱炭素を達成しても、他社が別工程で二酸化炭素(CO2)を大量に排出すれば、脱炭素社会は遠い。そこで注目されるのが、サプライチェーン全体の環境負荷、CO2排出量を減らそうという取組だ。

企業の環境経営やサステナビリティ・マネジメントについてのコンサルティングを手掛ける、日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門の環境・エネルギー・資源戦略グループ、シニアマネジャーの瓜生務氏に、企業が連携して取り組む脱炭素化、気候変動対応、情報開示について聞いた。

サプライヤーを含めた
気候変動対応が進む

最近、企業において気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)への関心が高い。TCFDは、2015年12月にG20の要請を受けて金融安定理事会(FSB)によって設立されたもので、経済や金融の安定を実現するためには、各企業・団体の気候変動リスク管理を評価した投資が重要だ、という考えに基づいて活動している。2021年2月の時点で、世界で1785社、日本で341社がTCFD開示に賛同している。これらの企業は、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4項目について、気候変動に対する情報開示が求められている。また、4項目については、CDP(旧:カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の気候変動質問書にも含まれており、現在多くの企業が取組を行っている。

図1 TCFDが関心を集める

国別にみるとTCFD賛同機関数は日本が最も多い

出典:TCFD公式ホームページの情報をもとにTCFDコンソーシアム作成

 

なお、TCFDでは気候関連リスクを「物理的リスク」「移行リスク」の2つに分類する。物理的リスクは、気候変動に伴う災害や水不足などによる経営への被害を指し、移行リスクは、低炭素経済への移行の過程で電気代が高騰する、炭素税が導入されるなどの事態を指す。

ただこのような情報開示活動の中でも、「自社以外の取引先や、サプライチェーン上に属する企業の活動に言及している例はまだ少ないです」と瓜生氏はいう。サプライチェーン全体で見た脱炭素化は、近年気候変動戦略において不可欠な要素と見られるようになっているため、今後の変化に注意が必要なポイントともいえる。

サプライチェーン全体にとっての物理的リスクには、災害で供給網が絶たれる、台風でサプライヤーの製造設備がダメージを受ける、といったケースが考えられる。移行リスクは、サプライチェーンの中の1社が厳しい規制や課税を受けることで、供給網全体が影響を受けるケースなど。そこで、まずはサプライヤーを分散させることが安定調達やリスク回避になるとされる。

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