ネット完結型クリーニング 起業家の着眼とビジネスモデルの勝算

2019年度グッドデザイン賞を受賞した「Lenet(リネット)」は、2009年に創業したホワイトプラスが展開するネット完結型のクリーニングサービスだ。DX(デジタルトランスフォーメーション)の先駆けである同社の起業から事業展開について、代表取締役社長の井下孝之氏に聞いた。

文・矢島進二 日本デザイン振興会 理事

 

ストック型・タイミング・市場規模

井下孝之氏は神戸大学大学院の自然科学研究科を中退し、「3年で起業する」と決め医療介護系ベンチャーに入社、経営企画や新規事業開発に従事する。同じく起業志向を持つ2人が主宰する勉強会で出会い、意気投合し2009年にホワイトプラスを3人で創業。現在1人は取締役の生産開発部長、もう1人は取締役CTOで、共に経営の中軸にいる。

3人で"何で"起業するかを考え、150ものビジネスアイデアを出し合い、最終的に「クリーニングのネット化」を事業化することを決める。理由は「ストック型事業モデル」「タイミング」「市場規模の大きさ」の3つだ。

「インターネットでモノが買え利便性は高まったのに、リアルが絡むクリーニング業は全く変わっていないことに気づきました。今でこそDXと言われますが、長期的にみてクリーニング業も変わらざるを得ない状況になるはずと思いました。それならば、自分たちが最初に手掛ける価値はあると信じて、この領域での起業を決めました」と井上氏は語る。

井下 孝之 ホワイトプラス 代表取締役社長

また「クリーニング業は固定客がつきやすい事業で、ビジネモデル的にもストック型であることも理由です。消費材や飲食業などのフロー型ビジネスでは、顧客から飽きられないために、常に新しいものを提供し続けなければなりません。クリーニング業は収益が上がるまで時間はかかるかもしれませんが、安定的な収益を見込めて長期的には黒字化への転換が可能と考えました」。さらに、iPhone 3Gの発売が創業の前年(2008年)で、"何でもネットに繋がる時代"の到来を感じていたと言う。

「現在のクリーニングの市場規模は約3,500億円ですが、創業当時は4,000億円前後でした。調べると、クリーニングはアパレル市場のトレンドと似ていることがわかりました。アパレル市場もバブル時代がピークで、以後ずっと減少していますが、例えばユニクロなど躍進したところはあるのです。縮小は生産人口の動態と一緒で、クリーニング離れが起きてるわけではない、事業手法の問題だと分析しました」

そして、井下氏自身が不便を感じていたのが、起業の4番目の理由だと明かしてくれた。「クリーニング店に毎週、持込時と引取時の2回拘束され、短時間とはいえ時間が費やされるのはストレスでした。さらに"楽しい時間"でないのです。普通の買い物はワクワクする出会いや楽しみがあるのに、クリーニングは何もない。これはネットへの置き換えができると思いました」

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