2020年8月号
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コロナ後の経済

経済学で考える パンデミックによる経済危機とイノベーション

吉川 智教(早稲田大学 名誉教授)

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新型コロナウイルスのパンデミックにより、経済はスタグフレーションに突入する恐れがあり、この危機から復興を遂げるためには、イノベーションが不可欠となる。経済学の視点からパンデミックの影響と、これから求められるイノベーションを考察する。

この数ヶ月、我々の心配は新型コロナウイルスであり、それが経済社会に与える損失は計り知れません。新型コロナウイルスのパンデミックを国難にしないために、今、我々に何が求められているのか。イノベーションの視点から議論を試みたいと思います。

私が以前客員研究員をしていた米国のスタンフォード大学からHAI(Human-Centered Artificial Intelligence、人間を中心としたAI研究所)が4月に開催した『COVID-19 and AI: A Virtual Conference(コロナウイルスとAIに関する仮想研究会)』というテーマのカンファレンスの案内状が先日メールで届きました。医学、生理学、公衆衛生、AI等の専門家が仮想的に集まり、議論を交わした研究会の録画が見られるという案内状でした。それは、各分野の専門家が感染予防のために一度も集まらずに、仮想的に一同に会した国際会議です。注1)

この意図と方法に注目したいと思います。情報技術(ICT,Information Communication Technology)を使って、こうした専門家の議論を世界に向けて公開し、今後の研究や政策に役立てようとしています。まさに、この仮想的な国際会議自体がイノベーションの一つです。

パンデミックとは何か

オックスフォード辞書によれば、英語のpandemic(パンデミック)の語源は、ギリシア語のpan=全て、demos=人々であり、「全ての人々」という意味です。私は、感染症や公衆衛生の専門家ではありません。今回の全世界的な新型コロナウイルスの問題を、経済学やイノベーションという視点から分析したいと思います。

感染症の範囲に関して、特定に地域のみに感染する風土病に見られる感染をendemic(地域的流行)と言います。特定の時期やendemicよりも広範の規模で拡大する感染をepidemic(流行)と言います。そして、全世界的な範囲の感染をpandemic(世界的感染)と言います。このパンデミックというのは、一国家では解決できない問題であり、他国の公衆衛生にも影響されることに注意が必要です。

過去のパンデミックの代表例として、
(1)17世紀の英国で発生したペスト
(2)20世紀初めのスペイン風邪
(3)1960年台の香港風邪
があります。それぞれ、数万人~数百万の人々が亡くなっています。

表1から理解できるように、パンデミックを生む大きな要因として、21世紀の大きな特徴である「グローバリゼーション」があります。それは一国では解決ができない問題であり、対策をより複雑化させています。

表1 感染症の範囲と求められる対策

出典:著者作成

 

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