2020年7月号
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SDGsの実践 あるべき指標と評価

SDGsと民間企業のサステイナブル投資を促すグリーンボンド

馬奈木 俊介(九州大学工学研究院主幹教授 都市研究センター長)、Alexander Ryota Keeley(九州大学大学院工学研究院 助教)

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コロナ禍で改めて認識される持続可能な社会

SDGsとパリ協定は共に2015年に気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択され、パリ協定に参加する各国が提出する温室効果ガス排出削減目標やそれを達成するための国別目標(Nationally Determined Contribution: NDC)の適切な実施はSDGs達成の鍵を握っている。しかし、現在、各国が提出している2030年までの削減目標を足し合わせても温室効果ガスの大気中濃度を十分に下げられず、2100年までに約3℃気温が上昇してしまうと予測されている。その中で、各国が5年ごとにNDCを見直し再提出する初めての機会となる2020年は、今後の人類の未来にとって重要な年となるはずだったが、新型コロナウイルス感染拡大により、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は2021年11月に延期が決定された。各国がNDCの見直しを進める中で、現在新型コロナウイルスのパンデミックによる感染症拡大の恐れと景気悪化の恐れ、どちらを優先するかで政府は揺れている(馬奈木, 2020)。一方、海外渡航や外出禁止等、移動制限や経済活動の制約により、二酸化炭素排出量は前年比5%以上減少する可能性もあるとも報告されている(Nasralla et al., 2020) 。このような状況下において、経済、環境、そして社会的福祉への影響も考慮した新型コロナウイルス対策の実施が、持続可能な社会を構築するきっかけともなると考えられる(Larkin, 2020)。

34業界・33か国に属する155の多国籍企業は、世界中の新型コロナウイルスの影響に対する経済援助と復旧の取り組みを、産業革命前と比較して世界の平均気温上昇を1.5°C未満に抑える政策と一致させるように要請している(Science Based Targets Initiative et al., 2020)。2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指す欧州グリーンディールのようなサステナビリティ政策を通じた循環経済の促進、産業の活性化、生物多様性の保全、気候変動の取り組み等、持続可能な開発に関わる公共及び民間投資は、短期的には新型コロナウイルスの経済的影響への経済支援になることに加え、中長期的にはSDGを推進することに繋がるため、このように多面的な便益をもたらす投資をより一層促進することが重要である。

2007年から発行が開始されたグリーンボンドは、上述した持続可能性の向上をもたらす投資を促進するビークル(手法)として大きく期待されている。なぜなら、グリーンボンドは、温室効果ガスの削減や自然資本の劣化防止をはじめとした環境問題の解決に貢献する投資案件を高く評価する投資家へのアピール性が高いからである。環境改善事業を行おうとする自治体や民間企業などが、債券を発行し資金調達するための有効な手段として、グリーンボンド市場は発行以来拡大を続け、2019年には世界全体発行額が2,580億米ドル(約27.6兆円)を超えている(Climate Bonds Initiative, 2019)。様々な社会的変革が同時に求められるポストコロナ時代において、グリーンボンドは、持続可能性への影響を考慮した投資を促進するための重要なビークルとなる。

大きく成長を続けるグリーンボンド

グリーンボンドとは、調達資金の全てが環境関連のプロジェクト(グリーンプロジェクト)の初期投資またはリファイナンスのために使われ、その要件が証券にまつわる法的書類に適切に記載された債権である。国際資本市場協会(英:International Capital Market Association、略称:ICMA)によって出版されたグリーンボンド原則(英:Green Bond Principles、略称:GBP)(2018)では、以下の通りに対象プロジェクトとなる事業区分が定められている:

1)「再生可能エネルギー」
2)「エネルギー効率」
3)「汚染防止及び抑制」
4)「生物自然資源及び土地利用に係る環境持続型管理」
5)「陸上及び水生生物の多様性の保全」
6)「クリーン輸送」
7)「持続可能な水資源及び廃水管理」
8)「気候変動への適応」
9)「高環境効率商品、環境適応商品、環境に配慮した生産技術及びプロセス」
10)「地域、国または国際的に認知された標準や認証を受けたグリーンビルディング」

グリーンプロジェクトの評価と選定の過程で、グリーンボンドを発行する自治体などの「発行体」は環境面での持続可能性に関わる目的、戦略、政策を投資家に明確に伝える事が求められ、環境基準や認証に関わるプロジェクト評価及び選定については外部評価を受けることが奨励されている。さらに、毎年発行される報告書(インパクトレポート)で、発行体はグリーンボンドで調達した資金が充当されている各プロジェクトのリスト及び概要、充当された資金の額、期待される効果をはじめ、定性的と定量的、両方のパフォーマンス指標を使用すること、そして効果算出のための主要な方法論や仮定の開示によってプロジェクトの透明性を高めることが奨励されている。

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