リーマン超えのインパクト 変化する「お金の向かう先」

世界規模の感染拡大は、金融に大きな不安定性をもたらしている。今後、金融資産はどう動くのか。金融メディアや資産運用の総合プラットフォームを運営し、FinTech推進支援を行うZUUの代表・冨田和成氏に、コロナショック下の動向を聞いた。

冨田 和成(ZUU 代表取締役)

リーマンショックを超える
インパクト

大手証券会社で富裕層向けプライベートバンキング業務などに従事し、『大富豪が実践しているお金の哲学』などの著書を出版、富裕層の心理や資産運用の動きに精通する冨田和成氏。2013年にZUUを設立し、月間400万人超を集める金融メディア「ZUU online」や資産運用の総合プラットフォームの運営、金融機関のFinTech化支援などを手がけている。

同社では、新型コロナウイルスの影響で停滞する経済環境や投資環境についてリアルタイムに情報を届けるべく、4月に「ZUU online」で緊急ウェビナーシリーズを配信。5日間で400人超が受講したという。「新型コロナウイルスによる経済へのインパクトは、リーマンショックをはるかに超えると感じています」と冨田氏は話す。

2008年9月に起こったリーマンショックも世界経済に大きな打撃を与え、大幅な景気低迷につながったが、このとき止まったのは資金の流れのみ。資金の供給を担保すれば、経済活動自体は止めずに動かすことができる。リーマンショック当時は米国を含めた各国の金融当局が資金供給を一気に行うことで、傷口を早期に塞ぐ方向へ動いた。

ところが今回は、感染の拡大を止めるために生産や販売といった経済活動自体をストップせざるをえない状況で、実体経済にまで影響が及んでいる。さらに、経済活動のストップ・停滞は長引くことが予想される。

「リーマンショック以降、極力モノを持たずに生活するというミニマリスト思想が流行ったように、経済危機が起こると、それまでの考え方や生活をリセットする流れが起こりがちです。今回は、人と人との交流が制限される事態となっており、"人と人とのかかわり"という観点で、大きな価値観の見直しが起こっていると感じます」

これまで、消費の多くは、夜の飲み代、観光、ラグジュアリー系へ向いていた。しかし、人と直接会う機会が減るのであれば、高級な服は必要ないし、格好いい時計をする必要性も薄くなる。

「今までと違う方向へお金が向かいます。直接触れあう機会が減少したことで、お金を通じて人を応援したり、支援することで感謝されるような消費行動が高まっていくと考えられます」

投資資金は"社会貢献"へ向かう

今後、個人の投資動向はどのように変化するのだろうか。冨田氏は、「投資家は常に"最高のシナリオ"と"最悪のシナリオ"を考えます。こうした金融危機、つまり最悪のシナリオのときにこそ動き出す方もいます」と説明する。リーマンショック時に見られたような、海外の投資家勢が都内の不動産を買いまくりその後売り抜ける、といった投機的な動きだ。そうした投資家が今後動き出すと冨田氏は予想する。

一方で、マーケットが崩れるときには、"応援したい、助けたい"というマインドの投資家も動き出す。危機だからこそ、元から応援している企業や、世の中に貢献しようとする動きが活発化するのだ。

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