2020年7月号
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コロナ後の推測

出口治明氏 社会の成熟度向上へ 構想力が試されるニューノーマル

出口 治明(立命館アジア太平洋大学[APU]学長)

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世界中を席捲している、新型コロナウイルスによるパンデミック。自然災害である台風が吹き荒れているような今は家に閉じこもり、やり過ごさねばならない。その後、爪痕が残る社会をどう立て直すのか。ニューノーマル社会のグランドデザインが求められている。

出口 治明(立命館アジア太平洋大学[APU]学長)

世界を飲み込むパンデミックは、過去にもあった。14世紀にはペストが、15世紀には天然痘(新大陸)が、20世紀にはスペイン風邪が世界的に大流行した。そして、パンデミックの後に社会は大きな変容を遂げている。この新型コロナウイルスが終息した後も、ニューノーマルが訪れる。もちろん、短期的には、人々は一気にカラオケや酒場に繰り出し、旅に出て、急速に元の状態に戻るだろう。しかし、中長期的に見れば、社会は確実に変化する。どのような設計図を準備してニューノーマルをつくるのか、今、そのグランドデザインを練らなくてはならない。

コロナ後の社会はどう変わるか

まず、働き方が大きく変わる。僕が学長を務めるAPUでは、事務職員の平均年齢が40歳ぐらいで、小さな子どもや小学生を抱える人も多い。2月27日に安倍総理が全国の小中高校に臨時休校を要請した後に子連れ出勤を実施したが、ほとんど問題なく仕事ができることが分かった。その他、オンライン会議、テレワーク、オンライン授業でも、教職員の努力もあり、さほど困ることはなかった。今回のパンデミックを通じて、市民のITリテラシーは間違いなく高まっている。今後IT化はさらに加速し、結果的に世代交代が進むだろう。

付き合い残業や飲みニケーションがなくなって、家族と向き合う時間が増えたことも大きい。働き方改革はいよいよ本格化するだろう。

教育では、オンライン授業の導入が進むほか、秋入学の考え方が出てきたことは素晴らしい。子どもが隠さなく同時スタートで学べるためにも、また世界中の優秀な学生に来てもらう、日本の学生を留学しやすくするなどと考えたら、グローバルスタンダードの秋入学にするしかない。激甚な状況下ではあるが、今考えなければ新しい世界は生まれないだろう。

ウイルスは人を介してのみ移動する。有効な薬がない中、感染拡大を防ぐにはステイホームしかない。人々の行動を制限する“ステイホーム”を市民にどう納得させるか。医療従事者やスーパーマーケットの従業員、ゴミ収集業者など“ステイホーム”を支えるエッセンシャルワーカーをいかにモチベートするか。さらに社会的弱者への所得再分配政策をどう迅速に設計して実行するか。世界中の指導者がこの3つの課題に取り組んでいる。

その指導力はメディアを通してリアルタイムで比較され、世界中の人々がリーダーの重要性に気づいた。幅広い年代層の人々が自分たちのリーダーについて真剣に考え始め、政治への関心が高まっている。今年4月に行われた韓国の総選挙では、投票率が9%アップしたという。

また、リーダーだけでなく、社会の成熟度も比較されている。フランスでは、3月17日に外出禁止令が出されたが、そのわずか数十分後の午後8時に、市民がベランダに出て医療従事者たちに感謝の意を込めて拍手を送ろうとする運動がSNSで始まった。映像が世界に流れ、その活動はたちまちスペインやイタリアなど他の欧州諸国、アメリカやアジア各地に広がった。

しかし、日本では医療従事者の子どもが保育園への登園を拒否されたり、地方のスーパーに商品を運ぶ東京ナンバーのトラックが罵声を浴びせられたりする様子が報じられている。この違いは社会の成熟度にある。今後は、市民が政治や社会の在り方について、もっと広く深く考えるようになるだろう。

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