チームラボ・猪子寿之氏が語る アートが持つ「分断」に抗する力

鑑賞者が「境界のない世界」を体験するアート作品をつくり続けているチームラボ。コロナ禍によって人や国境の分断が進む中で、チームラボの猪子寿之代表は、アートは「反分断の美」によって人を変え、人間が生きることを根源的に肯定すると語る。

「反分断の美」を体験するアート、
今、求められる想像力

――チームラボは、鑑賞者が身体ごと没入し、「人と世界」の境界線や「作品」同士の境界線を消失させるようなアート作品を制作しています。

しかし今、コロナ禍によって人や国境の分断が進むなど、「境界のない世界」とは逆方向への動きも強まっているように見えます。

猪子 人類は歴史的に多くの問題に直面してきましたが、それが分断によって解決されたことは一度もないと思っています。

猪子 寿之(チームラボ 代表)

例えば、奈良時代の平城京は、唐の都を参考にしたと言われているように、日本は世界とつながることで技術や制度を輸入し、国家という概念もグローバル化の中で生まれてきました。一方で奈良時代には天然痘がもたらされて大流行し、人口のかなりの割合が病死して国政を担う要人もたくさん亡くなった。

文明国家の誕生と感染症の蔓延は共にグローバル化という世界の境界が失われていく結果だったわけですが、人類はそれを分断によってではなく、薬やワクチンの開発、医療技術の進歩、衛生状態の改善など、協力し合うことで解決してきました。

現在のコロナ禍についても、目前の事象だけを表面的に見てしまうと、感情的に分断を促進することになりかねず、人々には歴史や科学の恩恵に対する想像力が求められていると思います。

アートや文化は、人類の「美の基準」を拡張してきました。アートが新しい「美の基準」を提示することで、人の世界の見え方が変わり、わかりやすく言えば花を美しいと思えるようになった。チームラボのアート作品は、「境界のない世界」の美しさ、反分断の美を体験してもらうためのものでもあります。

人間は、美によって動きます。企業組織は論理や言語で動いているように思われていますが、個人について見ると、その人の美意識に基づいて行動を決定していることが多い。例えば、人がその職業を選ぶのは、合理性だけではなく美意識が大きく影響します。「美の基準」のあり方は、人を変えていきます。

世界のすべては境界のない連続性のうえに成り立っており、つながっています。人間が他者や世界とつながっていること自体が祝福されるべきことであり、「境界のない世界」を体験することは、私たちの価値観や行動を変え、人類を良い方向へと動かしていく力になると信じています。

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