ANA、Universal MaaSの実現へ

ANAは2019年にMaaS推進部を正式に発足。空路だけでない、あらゆる移動に関する新しい取り組み。新たな価値創出へと繋げることが狙いだ。

左から、MaaS推進部 黒岩 愛氏、大澤 信陽氏、石井 祐司氏

ユニバーサルデザインに基づく
新しい移動の仕組みをつくる

全日本空輸(以下、ANA)は2019年6月、京浜急行電鉄、横須賀市、横浜国立大学とともに、ユニバーサルデザインに基づく総合的な移動サービス「Universal MaaS~移動をあきらめない世界へ~」の産学官共同プロジェクトを開始した。各事業者が連携することで、移動を「躊躇(ちゅうちょ)」する方々に包括的な移動体験を提供しようとする新たな取り組みだ。

「移動躊躇層」の背中を押す仕組み

ANAが考えるUniversal MaaSとは何か。同社企画室 MaaS推進部 Universal MaaS プロジェクト推進担当の大澤信陽氏によれば、Universal MaaSには4つの要素があるという。1つめは情報連携。現在、自律的な移動に困難を抱える人が外出するには、出発地から目的地まで利用する交通機関や各施設それぞれに対し、自分の特性に合った環境が用意されているかどうか、事前に確認しなくてはならない。各社が連携することで煩雑な確認作業の手間を省けるようになる。2つめは、あらゆる移動手段のシームレスな連携の確立だ。たとえ1カ所でも連携が途絶えれば旅程が繋がらない。3つめはバリアフリー。それは設備にとどまらず「人に迷惑をかけてはいけない」などの心理的なバリアも取り除く必要がある。さらに4つめとして、あらゆる人が相互理解を深め、移動に困難を抱える人に外出の動機づけをする必要がある。

現在は1つめの情報連携について実証実験を重ねている段階だ。「航空移動サービスに留まらず、出発地から最終目的地までdoor-to-doorで、移動全体を考える必要がある」と大澤氏は言う。「移動をためらっている方々、諦めてしまっている方々には、空港まで行くことができない、空港から先に行くことができない、といった課題がある。そうした『移動躊躇層』がどうしたら外出したくなるか、陸路および目的地での支援を担う京浜急行電鉄と横須賀市、そしてその支援のあり方を研究する横浜国立大学と連携しながら、一筋の線をつくろうとしているのが現段階です」。

移動躊躇層をイノベーターに

航空会社であるANAがUniversal MaaSに取り組む意味はどこにあるのか。ANAグループのCSRの基本的な考え方として、「社会的価値と経済的価値の同時創造」を謳っており、このプロジェクトを社会的価値を牽引する柱の一つにしたいと大澤氏は言う。「移動躊躇層の『本当は外出したい』という想いを実現させ需要を喚起することができれば、社会的価値だけでなく経済的価値にも繋げられます」。

大澤氏のビジョンは、Universal MaaSのコンセプトや仕組みを世界中に広めることだ。今はその最初の一歩を踏み出したところだ。「移動躊躇層の中でも、まずはハンディキャップのある方々にフォーカスしています。ハンディキャップのある人だからこそ思いつく素晴らしい視点がたくさんあります。ハンディキャップのある方々こそが移動サービスにおけるイノベーターだと思っています。Universal MaaSの実現によって得られる移動の楽しさを彼ら彼女らに語ってもらうことで、あらゆる人々の移動に対するモチベーションが高まるはずだと期待しています」。

 

お問い合わせ


全日本空輸株式会社
企画室 MaaS推進部

 

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。