燕三条・ツインバード工業 ユーザー参加型デザインでV字回復

ここ数年デザインクオリティが向上し、ブランド力もアップしているのが、新潟県燕市のツインバード工業だ。ユーザー参加型デザインの取り組みなどの飛躍の要因について、開発生産本部プロダクトディレクション部の上村哲也氏と古川泰之氏の2人にうかがった。

文・矢島進二 日本デザイン振興会 理事

 

古川 泰之 ツインバード工業 開発生産本部プロダクトディレクション部マネージャー

「参加型デザイン」とは、利用者などをデザインプロセスに積極的に巻き込ながら、ものづくりを行うアプローチだ。北欧発といわれ、日本でもイノベーション創出のための方法論として、近年注目を集めている。

この手法を志向しているのが、1951年創業の新潟県燕市にある家電メーカーのツインバード工業だ。メッキ加工業からスタートし、金属トレーなどの輸出で業績を急伸させ、70年代からは金属にプラスチックをかけあわせた製品でギフト市場に進出。80年代以降は照明やコーヒーメーカーなどの小型家電に事業領域を拡大し、現在の売上は約130億円で、97%は家電が占めている。

しかし、順風満帆な成長を続けてきた訳ではなく、2000年代前半には5期連続赤字の苦境に陥った時期があった。しかし2011年の現社長就任後は、経営モデルの一新が功を奏し、"V字回復"とメディアに書かれるようになった。そのポイントは、「ユーザー起点」と「量からの脱却」、その2つを実現するための「デザイン」だ。

「一緒に、つくる。お客様と。」

上村氏から経緯を聞いた。「2014年がブランディング元年でした。『一緒に、つくる。お客様と。』をスローガンに設定し、お客様との距離が近い家電メーカーに変容することを表明しました。そして翌年に、それを体現する拠点『ゲートオフィス』を東京日本橋に開設し、2016年には本社エントランスとショールームも改装しました。またSNSなどお客様とのタッチポイントも再編しました。この3年間の展開が起点となり、デザインのプロセスが大きく変化しました。体験型のショールームはお客様と直接触れ合える場であり、またゲートオフィスでは新商品のプレス発表会を行うなど、自社製品のプレゼンテーションに活用しています。ブランド訴求に繋がり、首都圏の大学からのインターン希望者が急増するなどリクルート効果ももたらしました」

燕市にある本社ショールーム。広いキッチンスペースもあり、料理教室などに活用されている

自社製品に直接触れてもらい、そこで得たユーザーの声をすぐにフィードバックし開発に活かす。そして、ユーザーと共感で繋がる輪をつくっていく。

現在は社員約300名で、約2割を企画・開発職が占める。企画デザイン担当は本社と日本橋の2拠点制をとる。「本社は開発系に特化し、日本橋は情報の受発信やプロモーション、流通など取引先との接点としての機能も担っています」

「ギフト業界中心だったころから、私たちのお客様も、またお客様との接点の方法も変化していきました。今の時代のお客様のお声に応えていく、そのためのキーファクターがデザインにあると認識しています」と上村氏は言う。

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