HARUMI FLAG 1.2万人が住む水素社会を実現

選手村跡地に生まれる、水素インフラを日本で初めて導入・運用した住宅地HARUMI FLAG。大規模再開発の長所を生かし、官民が連携して先進的なまちづくりの取組を詰め込み、計画を立てた。住みやすく環境負荷の少ない、2020年以降の日本の標準がここから生まれることを目指している。

中央、海に3方を囲まれた2棟の高層マンションがあるエリアがHARUMI FLAG。そこに接して走る道路が、都心と有明エリアをつなぐ環状2号線だ

HARUMI FLAGは、東京都中央区晴海5丁目の西側約13万4000平方メートルを舞台とした巨大プロジェクトだ。2020年にはオリンピックとパラリンピックの選手村として用いられ、その後2024年をめどに、老若男女5632戸が暮らす住宅地となる。商業施設や小中学校、公園など生活に必要な施設を全て備えたまちをゼロから作るべく、現在も工事が進む。

東京都の主導の下、マンションディベロッパーなど11社が構成する「特定建築者」と、東京ガスやパナソニック、東芝などの「エネルギー事業者」、それに建築コンサルティング会社や設計・施行会社、スマートシティ運営の知見を持つIT企業も参画。レガシーとして将来にどういうまちを残せるか、官民が連携して再開発計画を構築してきた。特定建築者の幹事社を務める三井不動産レジデンシャル東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部推進室主幹の高木洋一郎氏に話を聞いた。

高木 洋一郎 三井不動産レジデンシャル 東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部推進室 主幹

水素社会の姿を見せる

HARUMI FLAGの事業は、東京都が方針や理念を定めて進めるものだ。ここは東京湾岸の埋め立て地である晴海地区の中でも最も海側のエリアで、湾岸地域の中でも取り残されたようになっていた。東京都は同地区の再開発にあたり、このまちでは水素エネルギーを活用していくことを決めた。水素社会実現のモデルとなることを期待したのだ。

HARUMI FLAGの計画では、2022年に新橋までつながる新しい道路・環状2号線に面した場所には水素ステーションを整備し、バス高速輸送システム(BRT)や燃料電池車に水素を供給するとともに、地下のパイプラインを経由して街の中の各建物の純水素型燃料電池に供給する。分譲棟の各住戸にはパナソニックの家庭用燃料電池「エネファーム」を設置し、各家庭が使用する電気はそこで発電。

さらに、まち全体のエネルギー消費を管理するシステムを導入することとなっている。このエネルギーマネジメントシステムは、エリア全体を見るAEMS、23棟のマンションそれぞれを管理するMEMSと住戸レベルのHEMS、商業施設のビルを担当するBEMSが役割分担をする。AEMSは、街全体から集まる各種のデータを集約し、AIによる需要予測や消費電力の見える化を実施。住民にとって経済的かつ、エリアマネジメントを持続可能とする運営を担当する。

「MEMSを導入しているマンションは既にありますが、初期設定を変えずに運用しているところがほとんどです。HARUMI FLAGの場合には経験を積むほど、まちのエネルギー消費に合わせて最適化した供給が可能になります」と高木氏は説明する。

水素パイプラインを整備し、純水素型燃料電池を活用するまちは日本で初めて。全分譲住宅がエネファームと蓄電池を備えるのも日本で初めての試みで、水素社会のモデルタウンの役割は果たせそうだ。ビル屋上の太陽光パネルによる発電や、隣接する清掃工場からの熱・電力供給も予定されている。

「HARUMI FLAGの住民は、普通に暮らしているだけで環境に良い生活が実践できます」。多様なエネルギー源を併用しているため、災害に強いことも特長だ。

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