2019年12月号

実務家教員による大学教育

社会人向けプログラム設計 リカレント教育に対応した学びとは

川山 竜二(学校法人先端教育機構 社会情報大学院大学 研究科長・教授)

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実務家教員は、伝統的学生(ストレート学生)だけでなく社会人学生にも指導することがある。つまりリカレント教育の担い手にもなりうる。それだけではなく、リカレント教育プログラムの設計まで携わることになるであろう。では、いかにして社会人向けプログラムを設計するのだろうか。

実務家教員は、かならずしも伝統的学生(およそ18歳~22歳)に教えるだけではない。リカレント教育の担い手として、社会人学生(就労経験がある学生)にも教えることがありえる。そのときに期待されていることは、単純に科目の授業を担当するものとして教えるだけではなく、リカレント教育のプログラムを設計することである。

リカレント教育とは社会人の学び直しとも言われているが、ここで確認しておきたいことは、大人に指導するということだ。子どもに対する指導は教育学(pedagogy)がある。それに対して、大人に指導することを研究する領域にアンドラゴジー(andragogy)がある。アンドラゴジーは、アダルト(adult)と教育学(pedagogy)を組み合わせた造語である。

今回は、このアンドラゴジーの簡単な考え方を紹介したい。アンドラゴジーは、実務家教員がリカレント教育プログラムを設計するだけでなく、ひろく大人への研修や指導計画にも役立つはずである。

アンドラゴジーを提唱したM・ノウルズがいる。彼のアンドラゴジー理論は、簡単に言えば3つの柱からできている。一つは、成人学習者の特徴についてである。次に、成人学習者を指導する者が留意すべき点である。最後に、教育プログラムの設計方法である。おそらく最も重要であり今回と関連するのが、最後に言及した成人教育における教育プログラムの設計であろう。

ノウルズは、成人教育のプログラムを立案する際に、次の5つの点を指摘している。①対象者にふさわしい成人学習のための個人的・組織的・社会的ニーズを診断すること、②成人教育プログラムに効果的な開発と実施のための組織構造の形成と運営を考えること、③ニーズに見合う目標の設定とその目標に合わせた活動プログラムをつくること、④プログラムの効果的な実施のために必要な手続きの作成と運営をすること、⑤プログラムの効果を評価すること、である。

成人教育のプログラムを立案するときに気をつけなければならないのは、①と③である。つまり、社会人の学び直しで重要なのは、「社会人が学びたい」という関心を入り口として、最終的に社会人の「真のニーズ」を満たすことである。社会人は自分の興味関心から学びを始めるという特性もある。そうすると、本当に必要な学びと当人の興味関心がズレていることは多々ある。したがって、社会人が自らのニーズを発見して、それらを満たすことに興味関心を示すプログラムを開発する必要があるわけだ。社会人が学びたいと考えていることを真のニーズを満たすことへ変換できる教育プログラムをつくることが重要である。そのためにはまず、組織や社会での「真のニーズ」が何かという点を見つけ出すことが最初にするべきことになる。

ちなみに、ノウルズはこうも言っている。こうした教育プログラムを開発し運営する人間は、専門的な訓練を要する専門職である。この専門職は、特定の専門的な態度と能力が必要とされるのである。ぜひ、教育プログラムを設計・運営しようと考えたら、その学び直しからはじめて欲しい。

 

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