ブランドを付け替え、服を再販 廃棄を減らす「新しい売り方」
アパレルブランドのネームタグを付け替え、新しいブランドとして再流通させる「Rename」。それは消費者にとって、ブランドネームではなく、商品そのものを見て価値を再発見する機会になる。Renameを展開するFINEの加藤ゆかり社長は、アパレルの新しいエコシステムづくりを目指す。
約3年前から取り組みが始まり、2018年秋に公式ECサイトがオープンした「Rename(リネーム)」。それは、アパレルブランドやメーカーの在庫を仕入れて、ブランドネームを表すタグを付け替え、元のブランドが分からないようにしたうえで再流通させる仕組みだ。
ブランドやメーカーにとって、行き場を失った在庫を活用する画期的な取り組みであるとともに、消費者にとっては新しいアパレル商品と出会うきっかけになる。しかも、Renameでの販売価格は元の定価より3~7割安い。
赤字会社をアパレル事業で再建
ファッションには流行が存在し、サイズ別に大量生産が必要だ。なおかつ、新作を継続的に生み出さなければ消費者に飽きられてしまう。バーゲンセールを経ても売れ残った商品は、やがて一部がアウトレット品として市場に流通するものの、ブランドネームを付加価値にしている背景から、むやみな安売りはできない。ブランド価値を維持するために、やむなく焼却処分を選ぶブランドもある。
Renameを展開するFINE(愛知県名古屋市)は、2008年の創業以来、CDやDVDなどをアウトレット向けに卸す事業で業績を伸ばしていた。しかし、市場の低迷により業績が悪化し、倒産の危機を迎えてしまう。当時の赤字額は約9000万円。2013年に負債を背負うFINEのトップに就いたのが、創業メンバーの1人で取締役に就いていた加藤ゆかり社長だ。
「このまま会社を終わらせるわけにはいかない、諦める前にまだやれることはあると考えました」
加藤社長はFINEの再起を目指して、家具、家電、雑貨など様々な商材を扱った。その1つがアパレルだった。
「家電やDVDなど型番が明確なものは相場が読みやすい反面、資本力のある大きな会社が圧倒的に有利です。しかし、ファッションは『誰によって、どこでどうやって出会うか』で価値が変わる。この分野ならば、大資本にも勝てると考えました」
2015年、FINEはアパレル中心の事業に舵を切る。そして加藤社長は2016年、Rename事業を生み出した。きっかけはアパレル企業と取引をする中で、業界には深刻な在庫問題があることに気づいたからだ。
また、ブランドネームを表示しないことで販売機会が広がるという成功体験もあった。
「ある若者向けブランドから在庫を買い取り、ネットショップで販売したのですが、ブランド名を前面に出しても、ユーザー層が30~40代とミスマッチだったため、あまり売れませんでした。しかし、実際の商品自体はそれほど年齢を問わないものでした。そこで、ブランド名を敢えて出さずに販売すると、当初より少し順調に売れる結果となりました」
ブランドネームは良くも悪くも、消費者を選ぶというわけだ。
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