50年続くデザイン経営 旭川から世界に飛躍する木工家具メーカー
北海道旭川市は道北における経済・産業・文化の中心で、特に家具産業が世界的に有名だ。その中心を担うカンディハウスは、創業以来50年間、デザイン経営を継続している。代表取締役社長の藤田哲也氏は「デザインは一番重要な経営資源」と断言する。
文・矢島進二(日本デザイン振興会)
カンディハウスは1968年にデザイナーでもある長原實氏によって創業された家具メーカーだ。経営者自身がデザイナーを敬い、パートナーとして共にものづくりを行うスタンスを頑なに守り続けている。さらに長原氏は、家具組合や連合会などの代表を務める中で、業界の健全化を図り、また30年前から国際的な家具デザインコンペを実施するなど、旭川の家具を地域産業として育て、2015年に逝去するまで旭川家具木工業界を牽引してきた。
藤田哲也氏は2013年から社長に就任し、昨年の50周年事業を統括した。「節目の年なので、改めて歴史を振り返り、共有し、次代に繋げることに注力しました。ブランドのあり方を再構築したのです」
企業理念こそブランドの礎
現在でも毎週月曜の朝礼で、創業理念である「社訓」を全社員で朗唱している。さらに近年では、同社の脈々とした思想や、最新の状況を言葉と写真で共有している。海外も含め全国の支店にも当日中に動画配信を行い、インナーブランディングを徹底している。「営業も工場や間接部門のスタッフも、滲み出るぐらい自社のブランド力を認識しています。それが浸透して初めて外部への発信ができるのです」。これが同社の文化土壌であり、強固なパワーの礎になっている。
スローガン「ともにつくるくらし。」、ブランドコンセプト「北の共創力。」、これらも50周年にあわせつくったものだ。北海道の森と仲間、顧客とともに新しい価値をつくり、世界に伝えていく。その想いを具体的な行動に移すために、ブランドストーリーも再編集した。①自然に感謝し、森のそばで家具をつくる。②つくり手の努力と挑戦が、すぐれたデザインを形にする。③ものづくりで、「和の美意識」を発信する。これらによって自分たちの行動規範を明示したのだ。
藤田氏は続けて語る。「言葉の重みは、経営にとても大事なものです。またブランディングに経営の全てが集約されます」。いみじくも「ブランディング」という言葉を藤田氏は口にしたが、半世紀前はこの表現はなかったはずだ。だが、ブランディングの本質を同社は創業時から認識し実践してきた。
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