2018年9月号

人生100年時代のまちづくり

「人生100年時代」のまちづくり    行政と民間の共創が不可欠に

富士通

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人生100年時代を迎えつつある日本。あらゆる世代が長く幸せに、健康に暮らし続けるために、地域には大きな変革が求められている。これからのまちづくりには、行政と民間、住民による共創と、共創を促進するためのICTプラットフォームが不可欠である。

富士通フォーラム2018では「人生100年時代を見据えたまちづくり」をテーマにカンファレンスが開かれた

5月17日、18日の2日間、東京国際フォーラムで富士通の年次イベント『富士通フォーラム2018』が開催された。「Human Centric Innovation:Co-creation for Success」をテーマに、数々のセミナーやカンファレンスを通し、社会との共創の成果やプロジェクトの成功要因を、最先端のテクノロジーと共に幅広く紹介した。

18日には、『人生100年時代を見据えたまちづくり』をテーマにカンファレンスが行われた。2007年に日本で生まれた子どもは107歳まで生きる確率が50%あるという。人生100年時代に幸せに生き続けられる地域社会の在り方について、行政、医療、教育などの分野の第一人者が登壇し、IoTやAIなどの最先端テクノロジーのまちづくりへの活用や、官民のあるべき共創の姿について議論を交わした。

総務省 篠原大臣官房審議官
2040年を見据えた自治体戦略

篠原 俊博(総務省大臣官房審議官)

最初に登壇したのは、総務省大臣官房審議官・篠原俊博氏。2017年秋から取り組んでいる『自治体戦略2040構想研究会』の報告を軸に、人生100年時代の到来と、求められる自治体戦略について話した。

2008年をピークに日本の総人口は減少局面に入り、現在、少子化による急速な人口減少と高齢化に直面している。団塊世代が生まれた当時、年間260万人の出生数は現在94万人に、2040年には74万人にまで減少していく。地方圏の過疎化だけでなく、3大都市圏における急激な高齢化も大きな課題になってくる。

「こうした状況下で、地方自治体は持続可能なかたちで住民サービスを提供し続ける必要があります。これまでの人口増加を前提とした制度や運用を見直し、人口減少時代に合った、新しい社会経済モデルを検討していくことが必要です」(篠原審議官)

2040年にかけて迫り来る危機とその対応は、3つの柱に集約される。

①若者を吸収しながら老いていく東京圏と、支え手を失う地方圏。急激な高齢化に直面する大都市圏では、元気な高齢者が支え手に回る仕組みの構築が必要。また圏域内の自治体が連携した長期にわたる医療・介護サービス供給体制の整備が急務となる。

②標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全。従前の日本型雇用システムを前提としない、ライフステージに対応した働き方が必要となる。

③スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ。都市に無秩序な空き地や空き屋が増えることで、DID(人口集中地区)面積が縮小し都市の衰退を招く。都市機能を確保するため、一定の集積を維持していくことが必要となる。

こうした危機に対し、自治体は長期的な戦略を早い段階で定め、住民に選択肢を示し合意形成を図る必要がある。公・共・私のベストミックスで、制度や組織、地域の垣根を越え、資源を賢く戦略的に活用することが重要だ。

「自治体は『サービスプロバイダー』から、公・共・私が協力し合う場を設定する『プラットフォームビルダー』への転換が求められています。また、自治体はフルセット主義を排し、圏域単位で住民サービスを補完しあい、連携していくことが重要です」と篠原審議官は指摘する。

さいたま市 清水市長
市民・企業とまちづくりを推進

清水 勇人(さいたま市長)

続いて登壇したさいたま市長・清水勇人氏は、市民・行政・民間事業者が協働して取り組む人生100年時代に対応したまちづくりを紹介した。

上質な生活都市を目指し、日本一の教育都市、環境未来都市の創造、健幸都市づくりなどを進めるさいたま市。最新テクノロジーの活用にも積極的で、富士通の開発した、最適な保育所入所選考をAIでマッチング・実現する技術の実証にも協力している。

清水市長は「人生100年時代を視野に、高齢者が生涯現役で活躍できるよう様々な施策を展開しています」と述べ、一例として『さいたま市シルバーポイント事業』を紹介した。65歳以上の健康づくり活動と、60歳以上のボランティア活動に対して商品券や奨励金に交換できるポイントを付与する仕組みで、合計4万人以上が登録しているという。健康づくりや地域貢献を"楽しむ"というマインドを醸成するこの施策は、まさに超高齢社会に対応したものと言える。

そんなさいたま市が、副都心・美園ウイングシティで展開しているのが、『スマートシティさいたまモデル』の構築だ。スポーツ、健康、環境・エネルギーをテーマに開発面積320ha、計画人口3万2,000人を目指し、国の総合特区にも指定されている。

ここでは公民+学によるまちづくり推進組織が、アーバンデザインセンターみそのを拠点に様々な事業を推進しているが、中でも重点プロジェクトとして位置づけられているのが、まちのデータを収集・管理・活用する情報共通基盤『共通プラットフォームさいたま版』の開発実証だ。住民や来街者、自治体、サービス事業者のデータを蓄積、その分析と活用により新たなエリアマネジメント施策や地域サービスを構築する試みで、IoTデバイスを活用した子どもの見守り事業、健康や安全安心など地域の産学官のサービスを集約する地域通貨事業などのプロジェクトが始動している。

「IoTやビッグデータを活用しながら、災害に強く、将来にわたり健康で長生きできるまちを作っていきます。重要なのは、行政だけでやらないこと。民間、市民を巻き込んで、みんなで一緒に創りあげていくことが必要だと考えています」と清水市長は強調する。

東京大学 柳川教授
"学び直し"が重要な時代に

柳川 範之(東京大学大学院経済学研究科教授)

人生100年時代の働き方、学び方について語るのは、東京大学大学院経済学研究科の柳川範之教授。「高寿命化による人生100年時代をポジティブに捉えれば、いつまでも元気で働けるし、何度でも転機とチャンスが訪れる時代と言えます」と柳川教授は述べる。

一方で技術革新は早く、昔取った杵柄で働き続けることは難しい。長く豊かに働くためには、"学び直し"が必要な時代になってきている。

技術革新をもう一つの側面で捉えれば、学ぶことに対する技術もまた、進化している。地方でも、会社を休まなくても、東京やニューヨークの講義をネットから受講できるいま、時間と場所に縛られない学びが可能になっている。例えば、富士通が2016年に開設したJMOOC公認プラットフォーム『Fisdom』のように、セキュアなクラウド環境での安心・安全な学び場が登場している。

こうした変化を捉え、「住民に新しい学びの機会をどう提供していくか、行政は考える必要があります」と柳川教授は指摘する。

一方、学びの場はネット講義だけでないことにも留意すべきだ。例えば地域で社会貢献をすることも1つの学びのかたちと言える。「最近では社会的起業家も増えており、学びと社会貢献と収入の獲得は渾然一体となっています。人生100年時代には、社会貢献をパッケージ化して市民に提供することも、重要な行政サービスではないでしょうか」(柳川教授)

教育×ICTは世の中の常識を大きく変えていく。スマホやタブレットを通じた学習は、進捗状況に応じた個別教育を可能にし、さらに学習データや教員の知見をビッグデータとして集め解析することで、教え方の改善も図れる。人材の評価方法も、従来のような卒業校や学位種類ではなくよりきめ細かいものになり、企業の採用基準は変わっていくだろう。

「ここに大きなビジネスチャンスがありますし、行政も技術革新を公教育の改良に役立てていくべきです。自治体にとって重要なことは、民間とうまくコラボレーションをするためのスキームを構築し提供することです」と柳川教授は語る。

長崎川棚医療センター 木村氏
AIで地域の健康を守る

木村 博典(国立病院機構 長崎川棚医療センター統括診療部長)

国立病院機構長崎川棚医療センターの統括診療部長・木村博典氏は、『AIで地域住民の健康を守る』と題し、糖尿病重症化予防を例に挙げ、人生100年時代のまちづくりを医療の観点から語った。

充実した人生100年時代を送るために欠かせないのが健康寿命を延ばすこと。そのためには、生活習慣病の発症予防や重症化予防がカギとなる。

長崎県では、ICTを活用した地域ぐるみの連携で、糖尿病患者を地域全体で適正に管理し、重症化を予防していくための疾病管理システムを導入、2013年から運用している。現在までに1200人以上の患者が登録され、5年以上の診療データを蓄積。ボタン一つで様々な解析結果がリアルタイムで表示され、糖尿病診療の実態を多角的に把握できる。このプロジェクトでは富士通が2014年度に開発した糖尿病版疾病管理システムを活用している。

「私たちは疾病管理システムでデータを集めることをゴールとしていません。結果を解析し、視覚化して情報を共有することが極めて大事です」。すでに病態、経過などの情報が類似する患者群を探索して重症化傾向を分析し、医師の診断をサポートするシステムが完成しているが、「将来的には富士通のAI『Zinrai』を用いて、最良の治療法を医療現場に提案できるシステムの開発を目指します」と木村氏は言う。

「私たちは、診療現場の医師や専門医の協力を得ながら、システムエンジニアと一緒になって診療で使えるAIを創りあげていく共創の道を歩み出しています。今後は、健診データを管理する行政との連携・共創も避けて通れません。近い将来にはAIで地域住民の健康を守る時代が到来すると確信しています」(木村氏)

富士通フォーラム2018では、富士通の最先端テクノロジーを活用したソリューションが多数展示された

行政と民間の「共創」が不可欠

岡田 英人(富士通 第二行政ソリューション事業本部本部長)

続くパネルディスカッションでは、人生100年時代のまちづくりにおいて行政と民間にどのような共創の可能性があるのかを議論した。

行政にとっての悩みの種は、100年時代のまちづくりを推進し、新しい行政サービスを運用するための資金源の確保だ。民間との連携は、その課題の突破口になると登壇者らは指摘する。

木村氏は「蓄積する糖尿病患者のデータを匿名化し、統計的なデータとして製薬会社に販売し、薬の効果測定などに役立ててもらうという方法が考えられます」と、医療サービスを自立させるための手段を提示。清水市長も「地域での様々な実証データを匿名化し、情報銀行のようなかたちで外部に販売することを検討すべき」と述べる。

柳川教授は「Googleが検索サービスから莫大な広告収入を創出したように、新しいアイデアやビジネスモデルは民間から出てきます。行政サービスや医療においても、できるだけ異分野の企業と連携してデータの活用方法などを考えることが必要です」と話す。

民間との共創を目的に、まちの課題解決に向けたアイデアソン・ハッカソンを行政が主催する例も数多く見られるが、残念ながらアイデアレベルで終わってしまうことが多い。

「行政と民間の共創では、漠然とアイデアを募るのではなく目的を明確化し、そのためにどんな事業ができるかをディスカッションする必要があります。目的と適切な議論の場を用意することも、これからの行政の役割です」と柳川教授。篠原審議官も「行政が説明責任を果たすためにも、民間だけでなく住民も加わった新たな地域プラットフォームの構築が必要だと感じます」と述べる。

清水市長は富士通に対し、「さいたま市はIoTやAIなどの技術革新を積極的に取り入れて、市民サービスの向上や行政業務の効率化を図っていくつもりです。最先端テクノロジーを活用して具体的にどのような効果が生まれるのか、ビジネスモデルを含めてぜひ提案していただきたい」と述べ、共創への期待を込めた。

モデレーターを務めた富士通第二行政ソリューション事業本部の岡田英人本部長は「皆さんのご発言から、新しい共創の可能性を感じました。富士通は、新しい命を安心して育てたい、どこでも学びたい、健康に働き続けたい、いつまでも若くいたいという、100年時代を生きるあらゆる人々の希望を叶えるプラットフォームを構築して参ります」と述べ、ディスカッションを結んだ。

パートナーロボット「Unibo」を使った健康管理システム

生活音から居住者を24時間見守る「リモートケアベース」

富士通は、人生100年時代のまちづくりの推進をICTプラットフォームの面から支援する

富士通のシェアリングビジネス基盤サービス。アクティブシニアと地域課題のマッチングを実現

 

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