2018年5月号

TOKYO 2020 レガシーを生む新ビジネス

スポーツ人口をITで増やす スポーツテック企業の勝算

小泉 真也(Link Sports 代表取締役CEO)

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スポーツチームの管理ツール『TeamHub』を提供するベンチャー、Link Sports。すでに4000チームに利用され、大手とも提携。各チーム・選手のデータを蓄積した先に、スポーツの「楽しさ」を広げる新サービスの開発を目指している

憧れのスポーツ選手を目にすれば、自分でもその競技をやってみたくなる。2020年東京オリンピック・パラリンピックで期待されるレガシーの1つが、スポーツを「する」人の増加だ。

日本では、野球やサッカー、フットサルのほか、様々なマイナースポーツも含めてアマチュアスポーツが盛んに行われている。しかし、そうしたチームスポーツの運営には、日程調整やメンバーの出欠管理など、面倒なことも多い。そうした課題を解決するアプリが『TeamHub』だ。2016年8月にリリースされ、現在、約4000チームに利用されている。

小泉 真也(Link Sports 代表取締役CEO)

自身の経験が新事業のヒントに

『TeamHub』を開発したベンチャー、Link Sportsの小泉真也CEOは、大手メーカーを経て2014年1月に起業した。小泉CEOは小学校から野球を続けていたが、高校3年時に怪我をして選手生活を断念。その後、野球チームのコーチや草野球のプレーヤーを経ることでチーム運営の大変さは身をもって感じていた。それが『TeamHub』の着想にもつながった。

『TeamHub』は、チーム全員への連絡や出欠確認、試合結果の記録や個人・チームの成績管理などの機能がある。野球、サッカー、フットサル、男女ラクロスに対応しており、試合のスコア入力は、競技ごとに専用のユーザーインタフェースが提供されている。

例えば、野球でスコアブックを付けるのは大変だが、『TeamHub』ならば、スマホ・タブレットのタッチ操作で簡単に記録できる。近く、ラグビー、バスケ、バレーボールのスコア入力にも対応する予定だ。

野球やサッカーなどの人気スポーツも、その土台は、気軽に楽しむアマチュアの競技人口に支えられている

ベンチャーが勝負できる領域

近年、日本でも、スポーツテック(スポーツ×IT)のベンチャーは増え始めている。スポーツを「観る」領域で事業を展開している企業も多いが、Link Sportsのターゲットはスポーツを「する」領域であり、中でも、草チームやスクールチームなど、日本のスポーツ人口の土台となるアマチュア層に照準を定めている。

小泉CEOは、その領域には、ベンチャーにもチャンスがあると語る。

「プロやセミプロ、トップアマを対象にしたシステムは、すでに日本の大手企業や欧米企業が大きなシェアを持っています。また、スポーツを『観る』領域では、権利関係がハードルになったりします。海外のサービスについても徹底的に調べて、ベンチャーでも勝負できるのは、『する』スポーツを気軽に楽しみたいアマチュア層の領域だと考えました。日本人のほとんどが潜在ユーザーです」

『TeamHub』をリリースし、導入チームを増やしてきたLink Sportsは、大手とも提携。2017年、博報堂DYメディアパートナーズと提携し、野球チームマネジメントアプリ『PLAY』をリリースしたほか、数々のアマチュアスポーツ大会を主催する毎日新聞社と資本業務提携し、大会出場チームへのアプリ導入を進めている。

「今後、データ分析に強みを持つ企業や通信キャリアなどとも組んでいければと考えています。スポーツ分野において、自分たちで全部をやることは難しいので、多様な企業とのパートナーシップを築き、競争力を高めていきます」

チーム運営の課題を解決するアプリ『TeamHub』。スケジュール管理やチーム全員への連絡、スコア入力や個人・チームの成績管理などの機能を備える

データを蓄積し、収益源を拡大へ

Link Sportsは2017年11月、約1億円の資金調達を実現。エンジニアを増やして開発体制を強化し、成長戦略を加速させている。

『TeamHub』は現在、約4000チームに利用されているが、その数を10万チームにすることが目標だ。

『TeamHub』は基本無料で、有料プランにすれば追加機能を利用できる。小泉CEOによると、着実に売上げを伸ばしているが、本格的なマネタイズは、『TeamHub』の機能をさらに進化させた先にあるという。

まず開発を進めているのが、ウェブ版でのチームHPの自動作成機能だ。

「各チームがHPを持ち、みんなが試合結果や選手の成績を見られるようにします。そして、活躍したシーンの画像・動画を友人や家族に簡単にシェアできたり、試合で活躍したらスポーツ新聞の一面のような記事が自動でつくられて、それを見て試合後も楽しめるサービスを開発中です。仮に1チームのHPが100PVでも、1万チームあれば100万PV。いろいろな展開が可能になると思います」

例えば、物販やスポーツ保険、チームのオリジナルグッズがつくれるサービスなども考えられる。

また、チームや選手のデータを蓄積することは大きな可能性をもたらす。

「チームの強さを可視化できるので、同じレベルの対戦相手とマッチングしたり、試合の場所を確保したりといったサービスが考えられます。選手個人のデータも蓄積されるので、スポーツの実績で自分のキャリアを伝えたり、人とつながったりして、大切な試合では助っ人として呼ぶといったことができるかもしれません。そうしたサービスを2020年頃までに実現したいと考えています」

これまで、アマチュアスポーツのデータは蓄積されていなかった。Link Sportsは、そこにチャンスを見出したのである。

「蓄積されたデータは、10年20年と時が経てば経つほど、その価値は大きくなります。仮に、イチロー選手の小学生時代の成績を知ることができたら、それだけで興味深いデータです」

小泉CEOは事業の成長に向けて、さまざまなアイデアを温めているが、それらはすべてスポーツを「楽しむ」ことに集約される。

「プロ野球のニュースで一喜一憂するのと同じように、草野球チームにファンがいて、日々の成績をチェックしたり、応援する人が増えたりしたら面白い。Link Sportsが目指しているのは、たくさんの人が『スポーツって楽しい』『もっとスポーツをしたい』と思えるような世界観をつくり出すことです」

アマチュアスポーツの新たな文化、世界観をつくる。東京オリンピック・パラリンピックを追い風に、Link Sportsの挑戦が始まっている。

 

小泉 真也(こいずみ・しんや)
Link Sports 代表取締役CEO
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