小学校で英語が正式な「教科」に 学級担任の指導力が課題

グローバル化が進展する中、2020年度から小学校での英語教科化が始まる。子どもたちだけではなく、指導する先生側にも変化が求められている。現場経験もある有識者から、日本の英語教育の変化について聞いた。

小川隆夫 聖学院大学 人文学部欧米文化学科 特任講師

2020年度から始まる小学校5~6年生の英語教科化に対応するため、教育現場は充実した指導体制を確立しなければならない。しかし、現状では課題も多い。聖学院大学特任講師の小川隆夫氏は「先進的な英語教育を行う地域がある一方で、最低限のことしか取り組んでいない地域がある」と、対応の格差を指摘する。

小川氏は、埼玉県内の小中学校に30年以上勤務し、数々の英語活動を実践。現場を経験した後、大学院で英語教育の理論を学び、英国立リーズベケット大学に留学した経験も持つ。現場経験と理論の双方に精通する専門家だ。

「熱心な自治体は予算を付け、小学校での英語教育を支援しています。しかし、予算が潤沢にない自治体は、教材となるDVDを購入するのも難しく、教員が自費で教材を購入したり、独力で頑張っていたりします。このままでは、教員の力量が上がらずに2020年度を迎えてしまう地域も多いのではと危惧しています」(小川氏)

学級担任の主体性が問われる

現在、小学校5~6年生で必修となっている「外国語活動」では、ALT(外国語指導助手)が活用されることも多い。そうした指導体制について、小川氏は「ALTに頼りすぎてはいけない」と警鐘を鳴らす。

「ALTを数多く雇っていると、英語教育が充実するかのような誤解があります。ALT任せにするのではなく、大切なのは、学級担任が主体的に取り組むこと。小学校で教育の土台を担うのは、学級担任の先生です。例えば英語が苦手な子どもでも、学級担任が優しく見守っていれば、学習意欲が引き出される。現場を見ていると、英語の力量がある先生は、担任としても優れている傾向があります。そうした先生にALTが付くと、成果が生まれやすくなります」(小川氏)

東 仁美 聖学院大学 人文学部欧米文化学科 准教授

聖学院大学准教授の東仁美氏も、学級担任の重要性を指摘する。東氏は長年、荒川区での教員研修を担当するなど、小川氏と同様に現場での豊富な経験を持つ。

「学級運営をきちんとできるかどうかは、英語教育にも影響します。人と関わる共同学習が実践できていれば、それは自然とコミュニケーション教育につながる。学級担任が主体的に関わることで、子どもが学びやすい環境はつくられます」(東氏)

小学校教員、児童英語講師などを対象にした小学校英語指導者養成講座の様子

小学校英語の指導者養成で先行

学級担任が英語指導に悩む背景には、教員養成大学のカリキュラムの問題もある。多くの大学では、小学校教員を目指す学生に対し、前期1コマ・後期1コマ程度の時間でしか英語教育の講義を行っていない。

中学校教員を目指す学生と比べると、英語教育のトレーニングを受ける機会が乏しいのだ。

聖学院大学は20年近く前から小学校における英語教育の拡充を見越し、対応を進めてきた。同校は、小学校教員を目指す学生に対し、英語指導力を向上させる充実したカリキュラムを提供している。

さらに、学外の小学校教員、児童英語講師などを対象に、「小学校英語指導者養成講座」を開催。17年間続いている人気講座であり、定員一杯で予約が取れないほどの盛況となっている。

2017年12月に出版予定でmpi松香フォニックスの音源と教材に利用法も付けた実績的テキストだ

現場が使いやすい教材とは?

小学校英語の経験とノウハウを蓄積してきた小川氏、東氏は2017年12月、共著で『小学校英語 はじめる教科書』を刊行する予定だ。同書は、知識の習得を目的とするだけでなく、2人が厳選したmpi松香フォニックスの音源と教材に、利用法の解説を付けた実践的なテキストになる。

「フォニックス」とは、綴りと発音の関係を学ぶ英語学習法であり、mpi松香フォニックスは1979年の創設以来、英語教材の開発や指導者研修を行っている企業だ。

「mpi松香フォニックス会長の松香洋子氏は、私にとって児童英語の師の一人であり、今回の本でもmpiのメソッドは活かされています。本の内容は、聖学院大学で実際に使ったテキストが基になっており、学生たちの反応を見ながら、改善していきました。大学の研究者の視点でなく現場の視点に沿って、平易な言葉で英語教育を解説しています」(小川氏)

「教員養成の場で、授業に活用できる教材や音源を紹介しても、実際の現場にはそうした教材がないケースは数多くあります。今回の本には豊富な音源が付いており、この1冊で明日から現場で実践することができます。また、監修者である吉田研作先生(上智大学教授)に原稿をチェックしてもらい、数々の貴重な指摘を受けて完成します」(東氏)

小学校教員や学生が、無理なく英語教育に親しみ、現場で使いやすいツールを提供する。それは、新しい学習指導要領での英語教育に悩む現場の課題を解決する。

現在、2020年度の教科化に向けて、現場ではさまざまな試行錯誤が行われているが、東氏は今後への期待も口にする。

「これまで、小学校における外国語は、5~6年生という一部の先生の問題でしたが、今後は、多くの先生が避けられないものになります。全校を挙げて、子どもに英語の環境を提供する取り組みが本格化していくと思います」(東氏)

日本の英語教育の底上げへ、変化の兆しも少しずつ生まれている。

 

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