2015年10月号

防災対策の新提案

災害時に「本当に必要」な体制を整備 被災教訓を活かした防災協定

佐藤 翔(宮城県総務部危機対策課 防災推進班 主事)

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地震や津波、台風などの大規模災害に備え、民間企業と国・地方公共団体が、事前に防災協定を結ぶ動きが全国的に広がりを見せている。東日本大震災での経験をもとに、実際にどのような体制整備が進められているのか、宮城県の事例に注目した。

大地震を機に防災協定の締結を増加

大災害の発生時、災害対応は市町村ごとに進められるが、実際にはマンパワーの不足などの深刻な問題が予測される。そこで、平時から市町村を支援するために宮城県と企業・団体が防災協定を事前に結ぶことで、災害対応を円滑に進められるよう、体制が整えられている。その区分は「医療救護」「帰宅支援」「災害救助犬」「消防」「土木・建設・住宅」「燃料」「物資供給」「物流」「報道」など多岐にわたる。「宮城県では東日本大震災の以前にも、昭和52年の宮城県沖地震など大きな災害に襲われており、必要な防災協定を結んできました。平成15年の宮城県北部連続地震と平成20年の岩手・宮城内陸地震、これらをきっかけに、さらに防災協定の締結を増やしてきました」そう語るのは宮城県総務部危機対策課防災推進班の佐藤翔氏だ。

佐藤 翔 宮城県 総務部 危機対策課防災推進班 主事

東日本大震災の後はさらに60件の新たな協定が結ばれ、現在、宮城県が企業や団体と締結している防災協定の数は150件に及ぶ(平成27年4月時点)。

気仙沼湾気仙沼合庁より撮影

女川町

気仙沼市仲町

南三陸町志津川

気仙沼市朝日町

県民支援に留まらない防災協定を締結

東日本大震災の当日、鉄道や地下鉄、バスなどの公共交通が一斉にストップし、JR仙台駅周辺で1万1千人もの帰宅困難者が発生したと仙台市で推計している。帰宅困難者の多くは、公共交通が利用できないため、停電で真っ暗な中自宅までの長い道のりを歩いて帰らなければならなかった。このような徒歩帰宅者の支援を行うため、宮城県と仙台市、フランチャイズチェーン協会加盟事業者13社と、2014年8月に協定を締結した。「これにより帰宅困難者は、全国でチェーン展開するコンビニエンスストアやファーストフード店などで、水道水やトイレ、道路情報などの支援を受けることができます」

協力する店舗数は、県内で、1234店舗(平成27年3月10日時点)。店頭に貼られた全国共通デザインの四角の黄色のステッカーが目印だ。県民だけでなく、観光で宮城県を訪れて帰宅困難者になった人もステッカーを目印に支援を受けることができる。

「物資供給」に関する協定も、震災以降14件が追加された。「発災直後は水と食料の供給が最優先。しかし今回の震災では、人々の避難所生活が長くなり、時期が経つにつれて生活関連物資の要望が増えてきました」避難者が求める物資は、避難所の場所によっても様々だった。そうした多様な要望に応えるためにも、この先もさらに協定企業の数を増やし、体制を整えていく必要があると感じている。

宮城県薬剤師会との協定に基づき、薬剤師を派遣してもらい、医薬品等の物資を管理している様子

災害時の円滑な物資流通を実現

現在、協定締結に向けて調整しているもののひとつに、日本パレット協会との連携がある。東日本大震災の発災当初は、次々に届けられる物資を直接被災地に配送してもらうほか、県合同庁舎や議会庁舎に集約していたが、県職員が人力で荷捌きをしていたことに加え、物流の専門的なノウハウがないこともあり大きな負担となった。大規模な物資集積拠点が県内になく、民間企業の倉庫が使えるようになるまで期間を要したことから、発災直後において全国から送られた大量の救援物資の取扱いは混乱をきたし、被災地のニーズに応じた適時適切な集配ができなかった。

この反省から、宮城県では、応援部隊の一時集結場所や物資の流通配給基地等の機能を持たせた広域防災拠点の整備をすることにしている。さらに、災害時に被災市町村の迅速かつ円滑な防災活動を支援するため、広域防災拠点や市町村地域防災拠点と相互に補完・連携して、県内7つの圏域をカバーする圏域防災拠点を既存の公共施設から選定を行っている。

物流拠点となる広域防災拠点や圏域防災拠点には、発災後速やかにフォークリフトとパレット(荷物を載せる台)を確保できる体制をあらかじめ整備しておく必要がある。

「大量の物資の効率的な受入や配送にはパレットが必要です。パレットのレンタルでの供給体制などについて、年内の協定締結を目標に進めています。宮城県で締結されている防災協定は、どれもが東日本大震災での体験を通して“本当に必要だ”と実感できる内容のものばかりです。今後も必要な防災協定を増やし、災害時に迅速な活動が行なえるよう体制を整えてまいります」

宮城県倉庫協会との協定に基づき、支援物資等を民間倉庫に集積してもらっている(写真は東邦運輸倉庫)

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