元祖・農家レストラン、成功の秘訣は「地域を楽しむこと」

大阪・枚方市の郊外に広がる農地で、1972年にオープンしたレストラン「杉・五兵衛」。農家レストランの草分けとして、オーナーの野島五兵衛氏が提唱し続けてきたのは、「農の持つ多面的な価値を感じてもらうこと」だ。

農家レストランの老舗「杉・五兵衛」。広大な農園の中で、日本家屋が独特のたたずまいを見せる

農園内でとれた新鮮な農作物を使った料理を提供する「農家レストラン」。全国で数多くの農家レストランが営まれているが、その元祖と言えるのが、「杉・五兵衛」だ。

杉・五兵衛の農園は、大阪のベッドタウン・枚方市の新興住宅街を抜けたところに広がっている。訪ねたのは平日の昼間だったが、古民家調の本館レストランは入学式帰りの3世代の家族連れや、女性の団体でにぎわっていた。甲子園球場2つ分ほどの広さの敷地には菜の花が咲き乱れ、ガチョウやマガモが池に遊ぶ。少し歩けば40頭ほどがいるロバ園もあり、子供たちがエサやりに興じている。

「農業」を超えて「農耕」へ

野島家は数百年続く農家だ。1970年初めに大学の農学部に通っていた野島五兵衛氏は、日本の農業の将来に思いをめぐらせた。

野島五兵衛 杉・五兵衛 園主

「アメリカやオーストラリアの大規模農場でつくられた安い野菜が日本に入ってきたら、とうてい太刀打ちできない。店頭で売るよりも、熟したおいしい状態の果実、野菜をすぐにその場で食べる本来の農を実践したかった」

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