「箱の産業」から「場の産業」へ 人口減時代の住宅産業のカタチ

膨大な数のストックを活用し、建物や街全体を再生する。そんな新しい仕事の担い手たちが、確実に増えている。東京大学大学院の松村秀一教授は、この新しい潮流を「場の産業」と表現する。

「箱」を豊かな「場」に変える

松村秀一 東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 教授

今、建築は「箱の産業」から「場の産業」への大転換期にあります。

中古住宅や空きビル、公共施設などの膨大な数のストックを、人々の楽しく豊かな生活の場として再生する。そんな新しいタイプの仕事に取り組む人たちが、日本中の色々なところで、同時多発的に登場してきています。この非常に面白い、ライブ感のある仕事を、私は「場の産業」と呼んでいます。

今までの建築は、住宅やビルという新しい「箱」を供給する産業でした。性能やコスト競争力を磨き、時代の要請に応えて高度経済成長期から今まで良質な住宅を供給してきました。

これからの時代に求められるのは、これらの「箱」を豊かな「場」にする、新しい建築産業です。その担い手は、建築家や住宅不動産業界関係者だけに留まりません。ただ、共通しているのは、建物をモノとして改良するだけではなく、生活者の視点に立ち、ハードとソフト両面の工夫や仕掛けをしていること。また、建物単体ではなく、エリアや街に働きかけることを念頭に活動していることでしょう。

例えば、福岡市のスペースRデザインは、昭和30年代に建てられた空き部屋ばかりのビル「冷泉荘」をリノベーション。クリエイティブオフィスやショップを誘致し、クリエイターが交流できる場もつくりました。やがて入居希望が殺到するようになり、「溢れる水を他のビルにひく」ように第二、第三の冷泉荘をつくり、街全体に産業を集積させました。一企業の取り組みで街の景色が一変した好例です。

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