技術力でヘルスケア市場に革新を

寿命が延び、心身の健康がより価値を増していく現代。これまで培ってきた技術力と最先端テクノロジーを武器に、ヘルスケア市場でも新たな価値創造に挑戦する。マクニカ Co. Tomorrowing共創活動プロジェクトの星野氏が、ヘルスケアサービス開発の事例や今後の展望を語った。

星野 喬 マクニカ Co. Tomorrowing共創活動プロジェクト 兼 マクニカネットワークス 第2営業統括部長

マクニカは、半導体やネットワーク、セキュリティ事業をコアに、AIやIoT、自動運転、ロボット事業なども手掛けるサービス・ソリューションプロバイダーだ。市場の環境変化、ニーズを洞察し、市場に先行してテクノロジーを投入することで事業を伸ばしてきた。同社のミッション、ビジョン、バリューを、シンプルなメッセージとしてまとめたブランドスローガンが「Co. Tomorrowing」。ともに未来を作っていくという意味だ。テクノロジーによってより便利になる明るい未来、そして未来において人類が解決しなければいけない課題解決、の両方を実現していくというメッセージも込めている。

「当社の価値は、世界中から最先端のテクノロジーを探し出し、最適なものを見つけ出す(ソーシング)『目利き』、それを技術サービスと共に使いこなすための『仕上げ』、そしてお客様に提供する『実装』までできるところ」と、マクニカ Co. Tomorrowing共創活動プロジェクト兼マクニカネットワークス第2営業統括部長の星野喬氏は話す。将来は、SDGsなどの新しい市場に対してパートナーとともに、サービス・ソリューションプロバイダーとしてサービスを作って社会に貢献するというビジョンを掲げている。

環境負荷が高い産業を持続可能に
共創アプローチで解決を目指す

同社のCo. Tomorrowing共創活動プロジェクトでは、SDGsのような地球環境の課題に対し顧客に伴走しながら解決することをミッションにしている。なぜ半導体を主に扱ってきたマクニカがSDGsに取り組むのか。「我々はニッチな最先端テクノロジーを発掘し、それらの多くがイノベーションを生みだすのを目の当たりにしてきました。今までテクノロジーを使っていなかった既存産業にそれを取り入れることで新たなイノベーションを起こせると考えています」と星野氏は説明する。

また、半導体産業はその持続可能性に様々な課題を抱えている。原材料はケイ素やレアメタルといった資源であり、採掘の際には森林伐採が起きる。一方で、ウエハの生産には、きれいな水が大量に必要だ。SDGsに取り組むことが自分たちの事業を守ることにもつながっている。

マクニカの強みは、先端テクノロジーを扱う人、技術、経験があること。しかし1社で扱える範囲には限界がある。そこで、さまざまな共創パートナーと一緒に調査、仮説検証、実装、運用を伴走型アプローチで行い、結果として様々なソリューションを提供してきた。

同社が提供するサービスの中身はデータ取得、データ管理、ユーザーへの提供の3つに分けられる。データ取得は、センサーを使って様々な事象をデジタルデータにして取ってくることを指す。例えば温度、湿度、二酸化炭素濃度などだ。センサーは半導体でできている。どのようなセンサーをどう組み合わせれば効果的な情報が得られるかをマクニカでは熟知しているため、ニーズに合わせた最適なデータを取得できる。

次にデータ管理だ。データプラットフォームに蓄積し、AIで学習させ、推論を作る。そして何らかのアウトプットをユーザーに届ける。これを使って様々な産業やSDGsなどの目的ごとにAIをカスタマイズすれば、それぞれに合致したソリューションが提供可能になる。

図 ヘルスケア事業開発スキーム

半導体の技術商社であるマクニカでは、共創を通じてヘルスケア分野への参入を進めている

 

多様なセンサーを活用し
ヘルスケア分野に参入

同社は既にヘルスケア分野において、ソリューション開発・提供活動に着手した。ヘルスケア市場の中でも、デジタル領域でかつエビデンスベースやデータドリブンな製品領域に注力しようと考えている。

例えば、糖尿病の治療には定期的な通院と投薬が必要であるが、何より大切なことは患者本人の「治したい」というモチベーション。これを維持する為にアプリが食事や運動、バイタルなどのデータを管理し、時には医師とのリモートコミュニケーションを取る事で治療効果を高めることができる。マクニカでは、デジタルを活用した新しい治療方法の立ち上げにチャレンジしている。

ヘルスケア事業の開発スキームは、ソーシング(調査・発掘)、エビデンス、サービス化、販売のプロセスがある。このうちソーシングはマクニカで可能だ。「なぜ半導体を主に扱ってきた技術商社がヘルスケア領域でソーシングできるのかというと、半導体メーカーが未来のニーズを推測して製品を開発しているためです。彼らの洞察する未来は、利便性から社会課題を重視するよう変化しており、ヘルスケアは注目領域になっています」と星野氏はいう。

例えば、バッテリーで駆動するバイタルセンシングデバイスはその1つだ。このような背景から、マクニカが医療で強みを発揮できると考えた。ただし、医療のプロフェッショナルではないため、エビデンス取得から先の開発については、パートナーと共創して進めていくことになる。

一例として、大学発のフレイル予防プログラムにマクニカの先端半導体を活用し、生体データを自動的に収集する実証実験を行っている。また、先に言及したII型糖尿病患者向けの治療アプリについても、マクニカが出資しているSave Medical社を通じて製薬会社やオピニオンリーダーとなる医師と連携している。

専門家と協力してエビデンスを得た後は、サービスにしていく。生体情報を取得する装置として販売するほか、センサーを使って取得した複数の生体情報データをAIで学習させることによって、医師の意思決定を支援するサービスが可能になると考えている。このようなヘルスケア領域での共創に必要な知見を得るため、マクニカは、医療のイノベーションの事業化に必要なサービスをワンストップで提供する日本医療機器開発機構(東京都中央区)と2019年7月に事業提携した。

最後は販売だ。製薬企業、保険会社、医療ベンダー、医療卸ベンダーと連携し、テクノロジー機器、ソフトウェア、データプラットフォームを関連市場に販売していく。中でもデータプラットフォームは大きな可能性を秘めている。例えば、フレイル予防プログラム。バイタル情報収集デバイスを介護予防に応用すれば、リモートによる運動指導の介入もできる。自治体、美容産業、食産業がデータプラットフォームを介して連携することで予防効果、付加価値を高める事にも繋がる。

マクニカでは、このデータプラットフォームを通して、すべての人々が機会の創出に貢献できるようにし、新技術の開発によってもたらされる恩恵を分かち合いたいと考えている。「我々はともに未来を共創するパートナーを募集しています」と星野氏は発表を締めくくった。

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株式会社マクニカ
Co. Tomorrowing共創活動プロジェクト

URL:https://www.macnica.co.jp/
TEL:045-470-9870

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