2020年11月号
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クリエイターの視点

原研哉氏が語る観光の未来 「日本を知る」衝撃を世界へ

原 研哉(デザイナー / 日本デザインセンター 代表取締役社長)、青木 優(MATCHA 代表取締役社長)

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日本人の美意識の根底にあるのは「emptiness(からっぽ)」であり、それは無ではなく、「満たされる可能性」そのもの――。デザイナー・原研哉氏が考える日本の未来資源や、21世紀最大の産業である観光の行方について、MATCHA・青木優社長が話を聞いた。

原 研哉(デザイナー/日本デザインセンター 代表取締役社長)

日本人の美意識の根底には
「emptiness」がある

青木 私は、原さんが登壇されるイベントに同席したり講演を拝見する中で、原さんがお話しされていた「自分たちの文化の底に、世界に通用する価値の資源がある」という言葉が強く印象に残っています。

青木 優(MATCHA 代表取締役社長)

原 世界でグローバル化が進んできましたが、世界が広がれば広がるほど、地域の独自性が大事になります。つまりグローバル、ローカルというのは対義語ではなくて一対の概念になります。そんな時代には、日本人が「日本」を表現できるか、日本で世界をもてなせるかが問われます。

日本人の美意識の根底にあるのは「emptiness(からっぽ)」です。それは、西洋のsimplicity(簡潔・簡素)とは異なります。歴史を振り返ると、世界は稠密・複雑から始まりました。中国の古代の青銅器や祭壇装飾、インドのタージ・マハル、イスラムの寺院、西洋の宮殿など、多くのものが稠密・複雑な紋様に彩られていますが、それは王の権力を維持するために、豪華絢爛な装飾で強い力を表現する必要があったからです。

しかし、17世紀~18世紀に市民革命が起きて王制が打破され、市民が主役となる時代が到来したことでそれが一気に変わりました。華美な装飾ではなく、合理性・経済性を備えたものが評価されるようになり、simplicityという価値が新たに見立てられたのです。

一方、日本は西洋とは異なる歴史を歩んできました。ユーラシアの東端にある日本は、古代から世界の文化のるつぼになり、世界が豪華絢爛に満ちていた時代には、日本もそれを享受していました。しかし15世紀半ば、室町時代後期に約10年間にわたって続いた応仁の乱は、戦場となった京都に多大な被害を与え、それまで蓄積されてきた絢爛な文化や文化財が多大な喪失の憂き目にあったのです。

その結果、慈照寺(銀閣寺)の書院や竜安寺の石庭に象徴されるような「侘び」の文化が育まれ、稠密な装飾で満たすよりも、空疎であることに価値が見出されるようになりました。これを僕は「emptiness」と呼んでいます。日本のemptinessは、合理主義から到達したわけではありませんが、西洋よりも300年も前から簡素・簡潔の文化が積み上げられ、それは箸や下駄などの日用品の素材やデザインにも通じているのです。

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