観光庁 危機からの復活を期す 観光地の再生・発展に向けて
全世界を襲っている新型コロナウイルス感染症は、人々の観光や交流の機会を奪った。事業構想大学院大学では、観光地の緊急時対応と復興戦略をテーマにセミナーを開催。約1,500名の自治体・観光協会・DMO・民間企業がオンラインで聴講し、官民の復興戦略を議論した。
観光インバウンドフォーラムは、観光庁次長 髙橋一郎氏による「観光地の再生・発展に向けて」と題した登壇からスタート。髙橋氏の講演は2 部構成で行われ、前半では、新型コロナウイルス感染症発生前における観光立国に向けての国の取組や観光の状況について説明した。
新型コロナウイルス感染症
発生前の観光の状況
本格的な人口減少時代を迎えた日本にとって、観光は、成長戦略の柱、地方創生の鍵であるとともに、国際相互理解、ソフトパワーの強化の点でも重要である。今般の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い、訪日外国人旅行者数は大幅に減少した(2020年3月前年同月比93%減)が、世界全体のアウトバウンド(国際観光客到着数)は、2018年には14億人に到達しており、観光は世界的にも著しい成長分野である。国際観光市場ではアジア・太平洋地域の観光客数の伸びが著しく、日本においても、訪日外国人旅行者数は7年間で約3.8倍増の3,188万人に、消費額は約4.4倍の4.8兆円に拡大した(2019年)。
次に、訪日環境の変化の状況について説明した。観光庁の調査によれば、「日本滞在中に役に立った旅行情報源」の項目では、スマートフォンの存在感が近年高まっている点や、旅行手配方法の項目では、団体旅行(パッケージツアー)から個人旅行(FIT)への移行が顕著になっている点などが浮き彫りになっている。「旅マエ・旅ナカ・旅アト」の各段階での情報の取得・発信が重要である。特に、「旅ナカ」・「旅アト」におけるSNS等の口コミによる日本の魅力の伝播がリピーター獲得に向けて重要になってくる。
また、「モノ消費」から「コト消費」への移行も顕著で、旅行消費額のうち娯楽等サービス費の割合に着目すると、2012年1.1%から2019年には4.0%へと伸びており、この「コト消費」をいかに取り込むかが重要である。
このような訪日環境の変化も手伝って、観光は極めて裾野の広い分野となっており、宿泊・旅行業のほか運輸・飲食さらにはIT・金融・保険・映像コンテンツ等、さまざまな分野に生産波及効果が広がっている。
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