グリーンボンドはどのようにSDGsを促進しているのか
SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において定められている17のゴール・169のターゲットから構成されるもので、2030年までに発展途上国と先進国双方が取り組む国際目標である(外務省、2020)。国連貿易開発委員会は、SDGsを達成するために2030年までに年間5〜7兆米ドル(約538~753兆円)の公共及び民間投資が必要不可欠であると推定している(国連貿易開発委員会、2014)。2007年に発行が開始されたグリーンボンドの調達資金の使途は、気候変動の緩和と適応、自然資源や生物多様性の保全、汚染防止および管理等のSDGsに関わる環境目的に貢献する適格プロジェクトに限定されている。図1はグリーンボンドの各種対象プロジェクトがSDGsのどのゴールに貢献するかを示している。
図1:グリーンボンドの各種対象プロジェクトとSDGsの関係

出典:国際連合広報センター及びGBP (2018)に基づき筆者作成
グリーンボンド原則によって、調達資金の使途は的確に管理され、発行後の投資家向けのレポーティングにおいてもその透明性が確保されている。このような特徴により、サスティナブル投資を行う年金基金、保険会社などの機関投資家や運用機関、個人投資家の注目を集め、環境に優しいプロジェクト(即ち、グリーンプロジェクト)に対する投資・融資の原資を調達したい一般事業者、金融機関、地方自治体等が発行体した世界全体発行量は2019年は2,580億米ドル(約27.6兆円)を超えている(Climate Bonds Initiative, 2019)。
現在までの世界中のグリーンボンドの発行傾向をみると、調達資金がSDGsやサスティナブル投資を継続的に促進していることが分かる。しかしながら、調達資金の配分先については、発行体がある国の発展状況等により大きく異なることが確認される。2017年までに96か国の53の大手民間企業・金融機関・地方自治体によって調達された総額580億米ドル(約6.5兆円)の66%が北アメリカ・欧州連合でのプロジェクトや資産に配分されており(Tolliver et al., 2019)、そのうち、270億米ドル(約2.9兆円)が再生可能エネルギー関連のプロジェクト、3億米ドル(約300億円)がグリーンビルディング及び低炭素輸送関連のプロジェクトに充当されている(Tolliver et al., 2019)。
このように、グリーンボンドがSDGsやサステイナブル投資を促進する重要な鍵となっていることは確かだが、その配分先の地域や対象プロジェクトには偏りが見られる事も事実である。そのため、本稿では、主に日本と欧州、北米の民間企業に焦点をあて、各国における民間企業及びその他金融機関によるグリーンボンド発行状況を概観し、その後日本の発行量トップ企業数社のグリーンボンド活用事例について紹介する。
先進国におけるグリーンボンド活用状況の比較
図2は2007年から2018年までの世界全体のグリーンボンド発行量の各地の発行割合を示している。欧米諸国における発行量が世界の6割を占めており、日本における発行量は世界の2%程度だ。しかし日本では、2015年に約900億円(8.4億米ドル)のグリーンボンドが発行されて以降、年毎の発行額が急増しており、2018年までに総額約8,000億円(75億米ドル)が発行された。そのうち上位5つの発行体は下記の通りである。
図2:世界における2007年から2018年までのクリーンボンド発行額の地域別内訳

出典:Climate Bond Initiativeのグリーンボンドデータに基づき筆者作成
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