実務家教員が求められる社会的背景

大学教育改革では、「実務家教員」が一つのキーワードになっている。今、「実務家教員」は良きにつけ悪しきにつけ注目されている用語のひとつである。「実務家教員」が注目される背景には、それが求められる社会的背景があるはずだ。ここからは「実務家教員」が求められる社会的背景について、ひとつひとつ丁寧に追っていきたい。

日本が課題先進国と言われて久しい。少子高齢社会の到来による労働人口の減少、人口減少における経済規模縮小の懸念、東京の一極集中と地域衰退、さらにエネルギー問題など挙げればきりがない程の課題が積み上がっている。これらの課題は、決して日本だけが抱えている問題ではない。しかし振り返ってみると我が国は課題のみが先進し、解決策が遅れをとっているような状況である。

こうした課題を克服するべく平成28(2016)年に「第5期科学技術基本計画」が策定された。日本に山積する課題を先端的な科学技術の応用によって解決し、さらなる経済発展を目指す計画が示された*1。この基本計画のなかで、目指すべき社会像を「Society5.0」とした超スマート社会が示された。超スマート社会とは、「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細やかに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」(『第5期科学技術基本計画』p.11)であると定義されている。Society5.0があるということはSociety4.0もあれば3.0、2.0、1.0もあるはずだ。それについては狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続くような新たな社会としてのSociety5.0と位置づけている。この社会のバージョンアップは、技術革新によってもたらされているように見える*2。1.0と2.0の間には「農耕技術革命」が、2.0と3.0の間には「産業技術革命」が、3.0と4.0の間には「情報技術革命」というように、である。ではSociety4.0とSociety5.0の間にはどのような違いがあるのだろうか。

出典:KeidanrenSDGs

Society5.0は現在の社会であるSociety4.0を情報社会と定義し、その違いを次のように述べている。Society4.0では、人々が必要に応じてインターネットなどを通じてクラウド上(サイバー空間)の情報にアクセスし分析を行ってきた。Society5.0は、人々が実際に生活する空間(フィジカル空間=現実世界)とサイバー空間とがAIなどの先端テクノロジーにより高度に融合した社会となる。

*1  先端的な科学技術というと、いわゆる「理系(自然科学系・工学系)」を思い浮かべるかもしれないが「文系(人文学・社会科学系)」も含むと考えてよい〔厳密に言えば、「第5期科学技術基本計画」に人文学・社会科学系は含まれない〕。今年(令和2年)度に「第6期科学技術基本計画」が定められる予定であるが、その計画のなかには人文学・社会科学系が含まれることになっている。
*2  技術革新によって社会変動が生じるというのは、アルビン・トフラー『第三の波』を下敷きにしているように思われる。