2020年6月号

実務家教員による大学教育

オンライン授業と実務家教員

川山 竜二(学校法人先端教育機構 社会情報大学院大学 研究科長・教授)

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パンデミックとオンライン

世界的な流行(パンデミック)の様相を見せる新型コロナウィルス感染症は、教育の現場を含め日常生活様式をふっとばし一転させようとしている。教育現場はデジタライゼーションが進んでいないと従来から指摘されてきたが、学校を中心とした教育はこの外的な要因によってオンライン授業へ移行を余儀なくされている状況である。

今般の状況のなかで問題になるのはオンライン授業の方法、つまり授業のやり方である。例えば、カメラを前にしてどのように授業をやればよいのか、オンラインツールをパソコンで開いたときにどのアイコンをクリックすればよいのか云々。こうした情報は、(これもまたオンラインで)SNSを中心に集合知ともいうべき結晶があふれている。

こうした情報があふれているなかでも、なぜか私たちは不安にかられてしまうのではないだろうか。ZoomやMicrosoft Teamsの授業への効果的な活用法を熟知しても決定的な不安の解消にならない。語弊を恐れずにいえばオンライン授業は授業形態の一つにすぎない。もちろんオンライン授業もできないよりできたほうが望ましい。なにが言いたいのかというと、「はじめて教壇に立つ感覚」とほぼ同じであるということである。

誰しもがオンラインでなくともはじめて経験することは不安が大きい。逆に言うとただそれだけのことである。いやむしろ問題なのは、その不安の要因である。はじめて教壇に立つときの不安は、生徒・学生や受講者に「自分が伝えたいことが伝わるか」「わかりやすいか」ということである。この不安な点についてはオンラインだろうが対面での授業だろうが変わらない。

そこでもう少し踏み込んで考えてみると、いわゆる一般的に想定されている授業は、最終的に受講者への成長を促すものである。授業を通じて受講者は何かを身につけることが想定される。すなわち、オンライン授業の不安は「授業をやることだけが目的化」されていないか、というものである。

教育目標の再定義

オンライン授業をしようと思うと、どうしても初めての経験であるから「オンライン授業の方法論」に目が行きがちである。もちろん基本的な操作方法を知っておく必要があるが、それは二の次の問題である。ここで改めて「なぜ授業をするのか」という根本的な問いを投げかける必要がある。自分が担当する授業を通じて受講生に何を身に付けさせたいのか、ということである。

身に付けさせたい能力を踏まえた上で「オンライン授業」をどのように活用するのかを考える段階になって、はじめて「オンライン授業の方法論」が生きてくる。オンライン授業を対面授業と同じように「授業として認める」議論も盛んに行われているが、問題はともに授業の到達目標を達成できるかにかかっているはずだ。

授業の到達目標(身に付けさせる能力)なんて当然だと思われているかもしれないが、今一度自身の授業の到達目標を明文化してほしい。実は意外と具体的に書けない人の方が多いのではないだろうか。学校関係者であれば「ディプロマ・ポリシー(学位授与基準、卒業基準 云々)」、企業関係者であれば「コンピテンシー」のほうが馴染みあるかもしれない。

自分が提供する授業では、どのような能力・資質が身につくようになるのか。授業を終えたあとで「どのような状態になっていること」が望ましいのかを改めて考えることが必要であろう。その状態になるために、今は限られた環境下においてどう実現可能かを探ることが重要である。

そういった意味で私たちは「オンライン授業以前」の段階なのかもしれない。

 

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