総務省が描く2040年への展望 スマート自治体への転換が急務

人口減少下において、自治体が行政サービスを維持するためには、AI・RPA等のICTを活用し、業務プロセスを再構築していかなくてはならない。スマート自治体への展望について、総務省 自治行政局行政経営支援室長の植田昌也氏に話を聞いた。

植田昌也(うえだ・まさや)総務省 自治行政局 行政経営支援室長

2040年頃にかけて
迫り来る人口減少の危機

――自治体が直面している課題について、どのように見ていますか。

植田 2018年7月に公表した『自治体戦略2040構想研究会』の第二次報告の中で、「スマート自治体への転換」という方向性が打ち出されました。その背景には、人口構造の変化への問題意識があります。

これまでの日本社会は団塊世代の高齢化が進み、団塊ジュニア世代が下支えする構図になっていましたが、2040年には、団塊ジュニア世代も高齢者となります。団塊ジュニアの下の世代には大きな人口の塊がありませんから、2040年頃には、生産年齢人口の絶対量の不足という危機に直面することになります。

自治体にとっても人手不足が深刻化し、職員の確保が難しくなる一方で、災害リスクの高まりや老朽化したインフラの増加など、多様な課題が顕在化します。2040年頃にかけて生じる変化・課題に対応するためには、社会システムを再設計し、新たな技術を地域社会へ実装していかなければなりません。

全ての自治体において、AI・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション、業務の自動化)等のICTを駆使して、効果的・効率的に行政サービスを提供するスマート自治体への転換が求められています。

AI・RPA等を使いこなし、
自治体が担うべき業務に注力

――スマート自治体への転換によって、どのような効果が期待できるのですか。

植田 AI・RPA等の効果は、省力化やコスト削減だけでなく、住民サービス向上、行政運営の改善、ミスの削減等、多岐にわたります。定型的な業務にAIやチャットボット等を活用すれば、住民にとっても利便性の向上になりますし、職員にとっては、フェイス・トゥ・フェイスでの相談業務など、人が担うべき仕事に時間を充てやすくなります。

また、電子化・ペーパーレス化も重要です。今、行政手続きの多くが紙ベースで行われていますが、PC・スマホによる電子申請が実現すれば、住民は窓口に行かなくても所期の目的を達成できるようになります。現状の行政サービスのあり方を前提とせず、不要にできる手続きは不要にするなど、サービス自体を見直していかなければなりません。

自治体にとって、紙媒体で提出された書類をシステムに入力するといった作業は大きな事務負担になっていますから、電子化・ペーパーレス化は大幅な効率化につながります。さらに、データが入り口から電子データで入ってくる仕組みを構築すれば、AI・RPA等の活用をさらに前進させることができます。

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