コンパクトシティで維持する住民の健康 元気になれるしくみを構築

新潟県の中央に位置する人口4万人の見附市。特性を生かしたコンパクトなまちづくり、そして先進的な健康施策で注目を集める同市は、2019 年度の自治体SDGsモデル事業へ選定された。2002年から市長を務める久住時男氏が、持続可能なまちづくりへの思いを語った。

久住 時男(見附市長)

コンパクトなまちづくりを先進的に進めている新潟県見附市。市長である久住時男氏は同市出身で、海外勤務も長く経験してきた元商社マンだ。見附市に戻り、2002年11月に市長に就任した久住氏がまず取り組んだのは、健康施策だった。

「健康施策によって住民の行動が変われば、気持ちの元気になるのではないか。そこからスタートしようということで始めました」。

当時は税金を使って健康施策を行うことに理解が得られにくい風潮があった。そこで見附市では、行政が健康施策を行う必要があることを示すためにエビデンスを実証する取り組みを開始した。国民健康保険のデータを、個人が紐づけできないかたちで分析し、健康運動教室に通っている人とそうでない人の医療費の推移を5年間追跡し比較したのだ。すると、70歳くらいの年齢で運動教室に通っている人とそうでない人とでは、3年後の医療費に約10万円の差があることがわかった。他の自治体でも同じ実験をしても、ほぼ同様の結果が出たという。

「このようなデータが示されたのは世界でも初めてのことでした。これなら、自治体による健康施策はもっと広まっていくだろう、人口減少や高齢化社会を乗り切るための柱になるだろうと感じました」。

施策としてより理論立てて進めていこうという声が上がり、久住氏を含めた9人の首長が発起人となり、2009年に〈スマートウエルネスシティ首長研究会〉(会長:見附市長 久住時男)が立ち上げられた。今では自治体による健康施策は当たり前になりつつあるが、その先鞭をつけたのは見附市だったのだ。

公共交通と交流拠点を整備、
意識せずとも歩くまちに

その後、筑波大学などのアカデミアとも連携して研究するなかでいくつかの事実が判明した。ひとつは、移動を車に頼っている都市とそうでない都市では、糖尿病の発症率に差があること。そしてもうひとつは、健康増進のためには連続した運動でなくても、細切れの運動の積み重ねでもよいということだった。見附市では、これらのエビデンスをもとに健康施策を進めたが、どんなに参加を促しても参加者数が一定数から増えない壁に突き当たった。

これは見附市に限ったことではなく、他の自治体で調べても同じ結果だったという。関心層3割、無関心層7割という「7:3の法則」と久住氏らは呼んでいた。市ではさまざまな策を講じたが、無関心層を動かすことはできなかった。そこで出た結論が「意識せずとも、車に頼らず自然と歩いてしまうまちづくり」だった。

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