2020年3月号

セールスフォースが目指す地域観光経営のカタチ

豊岡市の観光産業を育てる データに基づくマーケティング

セールスフォース・ジャパン

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「小さな世界都市」を目指し、他の地域に例のない施策に取り組む豊岡市。地域経済を支える産業の1つ、観光では、訪日観光客の人気が高まっている。住民の暮らしと両立する持続可能な発展のため、データに基づく観光地経営を目指す。

(左から)谷口雄彦 豊岡市環境経済部大交流課課長、前野文孝 豊岡市副市長、高宮浩之 城崎温泉観光協 会会長、川角洋祐 豊岡観光イノベーション経営企画部長

兵庫県北部の豊岡市では、東京23区より少し広い市域に8万4000人が住む。市が目指すのは、「小さな世界都市」だ。市民の暮らしを守ることで、世界に通用するローカルを磨き、「地方で暮らす価値」の創造に向けて取り組んでいる。

豊岡市の観光産業は、志賀直哉の小説「城の崎にて」で有名な城崎温泉街を中心に、市内に散らばる宿泊・飲食業が担っている。城崎温泉は歴史ある温泉街であり、近年は外国人観光客にも人気の観光地。古い和風の温泉街の良さへの理解を促し、その価値に共感できる観光客を内外から集める手段を模索しているところだ。

繁閑の差を減らし効率を向上
正社員化で人材を確保

「城崎温泉は、国内では多くのリピーターを集めています。11月から3月にかけてカニを食べにくる方が中心で、繁忙期に季節性がありました。カニのオフシーズンに、訪日外国人観光客に来てもらうことを目指して様々な施策を打ち、平準化に向け取り組んでいます」と豊岡市副市長の前野文孝氏は説明する。人手不足が深刻な中、人材の確保のためにもインバウンド客の獲得は不可欠だった。

外国人観光客を呼び込むため、市ではまず、ネットで英語による情報発信を開始した。城崎温泉の特徴である外湯文化や昔ながらの街並みの良さを伝えるため、対象を個人客、中でも欧米の旅行者に絞った。観光まちづくりのためのマーケティングを担当する一般社団法人豊岡観光イノベーションのウェブサイトで、英語圏を対象にした広告を配信したり、英語圏の都市を優先してPR代行業者を置くなどの施策を実行。日本全体で見ると、訪日旅行者の主要な顧客は東アジアからの旅行者だが、城崎温泉を訪れる東アジアの観光客の比率は、日本の他の観光地より低い。

風情あるまちそのものが城崎温泉の強力な観光コンテンツだ

この結果、地元の宿泊業においては、年間を通して宿泊客を確保することで、従業員を正社員化にも寄与できるようになった。今後、雇用した人材に継続して働いてもらうために、事業の効率を高め、待遇や働きやすさを向上する必要もある。

観光消費を増やし高効率化目指す
魅力的な観光コンテンツが必須

そのためには、戦略を立てたマーケティングが不可欠だ。「当初から、訪日外国人観光客の数を追求するのではなく、城崎の良さを分かってもらえる顧客を集めたいと考えていました。城崎温泉が好き、という人に来てもらうことで、無理なサービスをすることなく口コミの評価も上がり、さらに人が集まるという好循環が生まれました」と、城崎温泉観光協会会長の高宮浩之氏は振り返る。そのために、まず「城崎温泉に来てほしい観光客」のペルソナを設定し、その人に感動してもらう環境を整えることを目指した。地域の情報の伝え方や、リピーター化のための方策も検討した。

また、地域のDMOとして発足した豊岡観光イノベーションでは、ウェブサイトで収集した情報や顧客ヒアリングに基づく豊岡市の観光地PR策を立案した。アジアの個人旅行者は知り合いの口コミを重要な情報源としていることから、ブロガーやインフルエンサーによる情報発信も試みた。「タイからの個人旅行者が増えたのは、インフルエンサーマーケティングが貢献している可能性があります」と、豊岡観光イノベーション経営企画部長の川角洋祐氏は話した。

豊岡市としては今後、城崎温泉から周辺の他地域へ、観光による経済効果を波及させたい考えだ。市内の神鍋高原にあるスキー場や、日本海に面した海水浴場、出石城下町および演劇関連のイベントなどにも観光客を誘客していきたいと考えている。

「観光客の希望を聞くと、『ひたすら長距離を散歩したい』などの思いもよらないリクエストが出ることもあります。このような意見をもとに、インバウンド客に受け入れられるアクティビティを作りたい。また、城崎温泉は今のところ、長期滞在する場所にはなっていません。地域資源を生かして、長く滞在して楽しんでもらいたい」と、豊岡市環境経済部大交流課課長の谷口雄彦氏は話す。

現在、関西圏からがメインの日本人客も、関東や東北、九州など、他の地域へと増やしていきたいという。野生復帰に成功したコウノトリが見られる、自然と共生した田園風景や、舞台芸術に特化したアーティスト・イン・レジデンス施設を持つ現代演劇の最先端都市としての顔も観光資源として生かす考えだ。

前野氏は、観光産業の国際競争は今後、より激しくなると考えている。東京のような大都市や、ハワイのような有名な観光地との比較で、城崎温泉や豊岡市が選ばれるようにするためには、デジタルマーケティングが重要になる。「予算は限られているので、効率よく響く手法を選び、顧客と市をダイレクトにつないでいかなければなりません」。

そのためには、個々の旅館ではなく地域全体のデータを集め、分析する必要がある。豊岡市の外国語版ホームページ「Visit Kinosaki」には、旅館の空室検索と予約ができる機能を実装しており、このサイトを通じて予約した人については属性が掴めるようになっている。このようなデータを蓄積し、商品設計などに役立てていく考えだ。

インバウンド客の誘客活動を通じて高宮氏は、温泉地全体を1つ旅館のようにとらえられる城崎温泉の特性が、ICT活用に適すると考えるようになった。「ここは、旅館同士で客の奪い合いをしない、地域全体を好きになってもらいたいという気持ちが大きい。個別の旅館ではなく、地域を対象とした新しい挑戦でも実施しやすいと思います」。

 

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