中小事業者の売上アップへ 信金が進める地域産業のDX

豊岡市周辺の地場産業を支える但馬信用金庫。城崎温泉の旅館再生や、出石そば店のデジタル化を推進してきた。中小企業のデジタル化を進め、地域全体の産業振興につなげる。

宮垣 健生 但馬信用金庫常勤理事、事業支援部長

但馬信用金庫は、豊岡市に本店を置く信用金庫だ。設立は1924年で、観光業やカバン製造・卸売業など、地場産業の発展とともに成長してきた。地域シェアは4割と、存在感の大きい信金でもある。金融機関としての業務に加え、近年はビジネスコンサルティングや、新規事業のプロデューサーとしての役割も果たすようになっている。

人手・後継者不足に解決策を
まちを守り事業をつくる

「但馬信金がカバーする地域の事業者の大きな問題は、人手不足と後継者不足。顧客事業者から多くの相談を受けます」と但馬信用金庫常勤理事、事業支援部長の宮垣健生氏は話す。人手が足りない旅館には人材紹介事業者や、廃業する会社からの人材の引継ぎを紹介し、後継者がいない会社には域内でM&Aのマッチングも行う。

2018年には、民間都市開発推進機構と組んで、「城崎まちづくりファンド」を立ち上げた。これは、城崎温泉街の景観を維持しつつ、地域の課題を解決するためのファンドだ。1号案件では、温泉街の古い旅館を再生し、持ち主をオペレーターとするゲストハウスに改装した。築90年の古い建物をリノベーションで生かし、温泉街の風情ある景観を守ることができた。地域に密着して活動する信金として、既存の旅館ビジネスと競合せず、まちにも貢献する新規事業の立ち上げに成功した例となった。

また、豊岡市内の出石城下町では、名物のそば店のキャッシュレス化を進めた。出石の皿そばは遠方から食べに来る人もいる人気の観光資源だが、繁忙時にはお店の入り口付近のレジが混雑し、入店をあきらめてしまう人もいて機会損失になっていた。さらに、いかにおいしくてもそばだけでは客単価が上がらないという問題もあった。

そこで但馬信金はクレディセゾンと連携し、カード決済端末を未導入の店舗30数店に端末を入れ、テーブル決済できるようにした。併せて、客単価を引き上げ、かつ店で出しやすいメニューを検討。発酵食品を使った料理を得意とする料理人の伏木暢顕氏とコラボし、地元食材を活用した新しい懐石メニューを開発した。

「最初はキャッシュレス決済導入に及び腰だった店舗でも、客単価が上昇していることが一目で分かれば歓迎されます。施策をセットで打ち、成功例となりました」と宮垣氏は話す。

さらに出石そばの場合には、顧客の来訪時間などのデータが残るようになり、顧客が多い日時が把握できるようになった。営業時間を変えたり、延長したりするそば店も出てきたという。ただし、このようなキャッシュレス化の取組も、地域全体で見れば氷山の一角に過ぎない。「地域でビジネスをする小売業者、中小事業者では、まだまだ紙の業務が中心。ITの活用は進んでいません。地域の経営者を支える金融機関として、数年かけても地域事業者のデジタル化を進めていきたいと考えています」。

但馬信金では2019年2月から、クラウド型会計システムを提供するfreeeとのAPI連携を始めた。freeeは中小・零細企業やフリーランサーなどに利用者が多い。財務会計の面からのデジタル化を地域で進める良い機会となりそうだ。

「紙で売上を管理している事業者がデジタルに移行すると、移行時は大変かもしれませんが、業務の効率化に繋がります。また、経理の人材も高齢化しているところが多いので、デジタル化により結果として業務の継続性も高まります。今後も、色々な形で当地の事業者のデジタル化を推進し、地域全体の産業振興に貢献していきたいと考えています」と宮垣氏は説明した。

 

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