小学校で始まるプログラミング教育 必修化で開ける未来

先進各国の中では着手が遅れ気味だった日本のICT教育だが、いよいよ今年4月、全国の小学校でのプログラミング教育が始まる。ICT教育の導入を推進してきたCANVASの石戸氏は、日本発の「未来の教育」の実現を目指す。

子ども向けプログラミング言語Scratchを使ったワークショップ

2020年4月、小学校におけるプログラミング教育が必修化される。2023年度までに、全国の小中学校の全児童・生徒が1台ずつ、パソコン(PC)やタブレット型端末を使える環境を整備する、とした経済対策を2019年12月に政府は打ち出した。先進国の中では遅れているとされてきた日本の教育のICT化は、2020年に大きく前進する。ただしこれまでの道のりは平たんではなかった。

CANVAS理事長の石戸奈々子氏は、このような日本の学校のICT化を進める原動力となった1人だ。その石戸氏が、これまでを振り返り、将来の展望を語った。

石戸 奈々子(NPO法人CANVAS理事長 / 慶應義塾大学教授(バイバイワールド 代表取締役 / クリエイター))

時間を要した
ICT教育の学校現場での受容

石戸氏は、2002年に設立したNPO法人CANVASの活動を通じて、クリエイティビティやコミュニケーション力など、子どもが未来の社会を生きる上で必要な力を育む環境を、産官学連携で提供してきた。子どもたちが、プログラミングや作品を自分でつくって表現するワークショップなどを開催しており、参加者はこれまでにのべ50万人に上る。

石戸氏がMITメディアラボの客員研究員だったこともあり、CANVAS設立当初から、子どもがICTを活用し、創造力を発揮するプログラムに力を入れてきた。2019年6月に公布・施行された「学校教育の情報化の推進に関する法律(教育情報化推進法)」の法案検討にも、石戸氏が理事長を務める超教育協会の関係者と共に尽力。この法律は、学校教育の情報化施策の策定・実施を国が進めること、地方自治体には計画を定めて推進する努力を課すものだ。学校のICT化を進める上で、法的な裏付けとなっている。

他先進国では、初等教育からのICTの利用が段階的に始まっている。英国イングランドが、5~14歳の児童・生徒向けのコンピューティングの授業を必修化したのは2014年。フィンランドやハンガリー、エストニアなどの欧州諸国でも、初等教育からのIT教育が必修化されている。

一方、日本におけるICT教育は暗中模索の時期が長く続いた。インターネットの高速接続は普及し、携帯電話のIT端末化が進んだ2000年代でも、子どもたちがICTを使うことに対する抵抗は強かった。風向きが変わったのは、2010年に文部科学省が「教育の情報化ビジョン」を打ち出した後だ。これは、2020年度までに進める教育の情報化に関する方策をまとめたもので、1人1台の情報端末の整備にも言及している。

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