ツーリズムは真の成長産業となるか 観光事業の収益性を向上せよ

日本のツーリズム産業が、収益性を伴った持続的成長を遂げるためには、何が必要なのか。インバウンド・ビジネス戦略に精通する早稲田大学大学院・池上重輔教授に、現状の課題と今後の展望、地域や事業者に求められる取り組みについて、話を聞いた。

池上 重輔(早稲田大学大学院 経営管理研究科 教授)

――政府は、2030年に外国人旅行者6000万人を目標に掲げています。インバウンド市場の長期的な展望について、どのように見ていますか。

池上 日本のインバウンド市場は、政府予測以上に拡大する可能性もあると思います。ただし、それはマクロ環境が激変せず、かつ適切な施策を取れば、という条件付きです。

訪日外国人の比率を見ると、中国、韓国、台湾、香港の4ヵ国・地域が70%を占めていますが、例えば今、香港は不安定な状況にありますし、韓国とは政治的な理由から日本に来る旅行者が減少しています。これからの10年、東アジアで何が起きるかわかりませんし、かつて製造業でチャイナリスクが具現化したように、インバウンドも国際情勢に大きな影響を受けます。

そうした前提はありますが、6000万人という目標を達成するためには、インバウンドのターゲット国を広げる必要があります。具体的には、欧米の観光客を増やさなくてはなりません。そのためには、今まで以上に交通機関や宿泊施設、飲食店などで、言語対応や支払、IT対応等をニーズに適応させて充実させることが重要です。

観光に求められる
本当のマーケティングとは?

――日本のツーリズム産業の課題について、どのように見ていますか。

池上 民間も行政も、インバウンド・ツーリズムのマーケティングを誤解しているところがあります。マーケティングとは本来、具体的なターゲットを定めて、その層に関する情報をインプットしたうえで、どのようなプロモーションをするのか、アウトプットを考えます。つまり、ターゲティング、インプット、アウトプットのサイクルを回していくことが重要になります。

しかし現状では、マーケティングの取り組みのほとんどが、インプットを疎かにしてアウトプットを考えることに偏っています。多くの地域が、ターゲットとなる外国人旅行者の興味・関心を知ろうとせずに、例えば地元の伝統産業の職人が持つ「こだわり」や「思い」に焦点を当て、その情報発信に力を入れたりしています。

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