日本郵便の越境EC向けサービス 海外進出を支援

国際郵便サービスを越境ECに活用する企業の増加を受け、日本郵便では新たな需要に応える、専門のサービスを用意している。手続きや関税面での参入のハードルはより低くなっている。

郵便局の国際郵便は、海外の友人や家族に、メッセージや品物を届ける手段として長く用いられてきた。 EMS(国際スピード郵便)は、業務用書類・商品サンプルの発送で製造業などに利用されていた。その風向きが変わり始めたのは約10年前。「ネットで販売した商品を、海外に発送する企業が徐々に増えました」と日本郵便 郵便・物流営業部課長の上垣内覚氏は振り返る。国境を越えたネット通販、越境ECに、国際郵便が使われ始めたのだ。

2012年度に877万件だったEMSの取扱件数は、2017年度には1415万件となった。日本郵便では越境ECセミナーの開催、越境EC向けサービスを開発するなど、海外進出を支援している。

選択肢が増える越境ECの物流

国際郵便のサービスは、荷物のサイズ、到着までの日数、そして負担できるコストに合わせ、複数の種類から選択することになる。越境ECの参入初期の企業に最もよく利用されるのがEMS。世界120以上の国・地域に、数日で荷物を届けられる。2kgまでの小さな荷物については、オンラインで配送手続きとラベル印刷をする国際eパケット、配達までの日数が長く、荷物の追跡をしない分、価格を抑えたサービスである国際eパケットライトなども利用が増えているという。

まとまった量の商品を海外の現地倉庫から発送したい場合には、国際宅配便ゆうグローバルエクスプレス(UGX)が使える。UGXは2014年秋に、国際郵便を補完するサービスとして創設したもので、オーバーサイズの荷物や商用サンプルの輸送に使われている。これを越境ECに合わせて発展させ、欧米など向けにはアマゾンの倉庫にまとめて配送するUGX Amazon FBA相乗り配送サービス、中国向けには越境EC通関配送サービスなどを開始。日本から個別に送る場合と比べ、送料を抑制できるのが利点だ。

「UGXは、関税を元払いできる、複数個口扱いに対応しているなどの特長があります。中国向けでは、一定条件を満たすことで越境EC総合税による通関を利用でき、関税面でも条件が有利になるなどの利点もあります」と同社郵便・物流営業部係長の中島華氏は説明する。

中島 華 日本郵便・郵便物流営業部係長、上垣内 覚 同課長

日本郵便では、これらの国際郵便・宅配便サービスの利用拡大を図るため、越境ECのすそ野を広げたいと考えている。ネット通販が世界各国で普及したことにより、これまで海外への販売の機会がなかった企業でも、挑戦すれば成功の可能性は出てきた。

とはいえ、企業が越境ECに参入する際には、商品の開発で頭がいっぱいで物流まで気が回らないケースは多い。しかし、海外から注文が入っても、配送できなければ売り上げにはつながらない。いかにお客さまの手元まで届けるかを具体的に考える必要がある。

海外への輸送では、より厳しいルールが存在することも、念頭に置かなければならない。例えば、香水や度数の高いアルコール類など「航空危険物」に分類される商品は、国際郵便で送ることができない。傷みやすい商品や壊れやすい商品にも、特別な配慮が必要になる。そこで日本郵便では、個々の企業が抱える疑問について、越境ECセミナーや個別相談で対応している。

「海外へ自社の商品を送る際、郵便局が使えるということをまずは知ってほしい。越境ECは、中小企業が新しいビジネスの機会を獲得できる大きなチャンスです。日本郵便は、新ビジネスを支える基盤として貢献したいと思います」と上垣内氏は語った。

 

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EMS(国際郵便)
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