ESG・SDGsを中枢に 経営も価値観の転換に対応せよ

SDGsを経営に組み込むことでESG投資を呼び込む動きが世界中で広がっている。サプライチェーンですべてがつながる今、自社の利益を考えるのみでは脆弱性は増す。ESG・SDGsへの取り組みは、リスクを超えて成長を続ける企業かどうかを示す指標でもある。

伊藤 邦雄(一橋大学大学院 経営管理研究科 特任教授)

2006年に国連が責任投資原則(PRI) を定めて以降、事業の持続可能性を重視する環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の拡大が続いている。2015年からは、持続可能な世界を実現するための国際目標、SDGsがスタート。企業経営においてESG・SDGsは欠かせない概念となりつつある。

伊藤氏は「なぜ急にESGが盛り上がっているのか、とよく企業の方から問われます。この動きの背景には以前からの3つの大きな潮流があり、それが合流して激しさを増し、奔流となっているのが今の状況です」と話す。

3つの潮流の1つは、パリ協定やSDGs。国連が公的セクターとして地球規模で解決すべき課題を掲げて国際目標を明確にするとともに、企業を含めた民間セクターの参加も呼びかけた。それに対し金融業界、とりわけ投資家コミュニティが参画した。

「オーナーから資金を集めて企業に投資し、企業は事業活動に投資してリターンを返す。ここに社会というステークホルダーが加わりました。これにより、投資家と企業の二者関係だったインベストメントチェーン(投資の連鎖)に地殻変動が起こったのです」。

2つ目の流れは、企業価値の決定因子が180°変わったこと。1990年代までは、機械設備や不動産など貸借対照表(バランスシート)に記載されるような良質の有形資産を持っている企業が高く評価された。しかし90年代以降、ビジネスプラットフォームや人材など、良質の無形資産を構築している企業が競争力と企業価値を高めている。今や、バランスシートの外側の非財務情報が企業価値に影響を与える時代だ。

3つ目の流れは、超長期投資家のプレゼンスが高まったこと。長期投資では、リスクが顕在化する確率が高くなる。長期投資家が重視するのは、企業のレジリエンス。そこで財務情報だけでなく、ESGをどう捉え、どう取り組んでいるかを見る。それが企業のリスク耐性につながっているからだ。

「ESGと並列で言われますが、Gは別格です。高いレベルでガバナンスを効かせることが、経営のレジリエンスの要です」。

すべてがつながる時代の経営

2015年12月4日、金融安定理事会(FSB)によって設立された、気候関連財務情報開示タスクフォース(TaskForce on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)。世界が低炭素経済へと移行していくなか、金融の安定性にとって、より適切な資本配分が重要だという考え方に基づいて設立された。低炭素経済への移行は、多くの企業に〈リスク〉と〈機会〉をもたらす。

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