「起こりそうな未来」から脱却、プロトタイプで別の未来を見出す
現在の延長上で生まれてくる「起こりそうな未来」は、すでに多くの人に注目されている。未来の断片をプロトタイプにして議論することは、「起こりそうな未来」から抜け出し、非連続的なジャンプが必要な別の未来を見出す力になる。
「潜在的な未来」の分類と可能性
未来はどれだけ確実性が高いように見えても必ず不確実です。未来とは何かと考えると、それは「まだ起こっていないこと」「不確実で確定していないこと」と言えます。今回は、現在の延長上に見える未来ではなく、より盲点になりがちな未来の可能性に視点を移し実現していくためのプロトタイピングの力について取り上げたいと思います。
アンソニー・ダンとフィオーナ・レンビーは著書『スペキュラティヴ・デザイン』(2015、ビー・エヌ・エヌ新社)の中で、潜在的な未来をProbable(起こりそうな未来)、Plausible(起こってもおかしくない未来)、Possible(起こりうる未来)、Preferable(望ましい未来)に分類しています。
潜在的な未来の可能性を示す価値は、現在の延長上で生まれてくる「起こりそうな未来」から、「起こってもおかしくない未来」、「起こりうる未来」、「不可能だと思い込んでいる未来」、そして「望ましい未来」に視点を移していき、より積極的に未来の可能性を切り拓いていくためにあります(図参照)。
一方で、新たな視点をもとに行動を生み出すためには、未来の可能性を感じるための仕掛けが必要です。プロトタイピングは、新規事業開発におけるPoC(Proof of Concept / 概念実証)を行うだけでなく、非連続的なジャンプが必要な未来の可能性に目を向けるためにも価値を発揮します。
未来のプロトタイプ
「i-ROAD」「Drone100」
2012年に発足したトヨタ自動車の未来プロジェクト室では、未来の移動の可能性を具体的に動かし体験できるプロダクトやサービスに落としこみ、参加型の実験的な取り組みを生み出してきました。
パーソナルモビリティとして開発されたi-ROAD(未発売)を用いた参加型のオープンイノベーションプロジェクト「OPEN ROAD PROJECT」では、100名以上の試乗パイロットを募り、試乗パイロットの手に委ねながら公道の走行に取り組みます。結果、試乗パイロットが現在の延長上にない未来の移動の可能性を体感することで、技術的な問題点や課題の発見だけではなくその先にあるより望ましい未来について意見が生まれていきます。
自ら試乗パイロットとして体験した上で生まれる意見は、未来の移動をただ概念的に検討することでは見えづらい、より感覚的な意見やアイデアを織り交ぜた、一歩踏み込んだ未来の可能性です。
オーストリアのリンツ市で1979年から始まった先端技術を用いたメディアアートの世界的フェスティバル「アルス・エレクトロニカ」では、物理的なMuseumであるアルス・エレクトロニカ・センターを1996年に設立し、その内部に先端技術を用いた制作やプロジェクトに取り組むFutureLab(Ars Electronica Futurelab)を運営しています。
FutureLabのプロジェクトの一つである「Drone100」では、ただ1機の飛行体としてのドローンを超えた未来の可能性を自ら実験的な試作によって取り組み、結果、インテル社と協働したドローン編隊による光のショーとさらなる未来の可能性の探求が生まれています。
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