2019年4月号

情報と技術で防災・減災

新聞の写真・動画をデジタル化し防災に活用 朝日新聞

朝日新聞フォトアーカイブ

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「朝日新聞フォトアーカイブ」は、戦前・戦中・戦後を通じて撮影されてきた写真や動画のデータを自治体や企業に有料で提供している。特に、災害に関する写真や動画のデジタル化を優先的に進め、自治体の防災に活用してもらおうとしている。

広島市で生じた土砂災害。このような記録写真は、防災計画立案や住民の教育に役立つ

防災関連の写真や動画を
最優先にデジタル化

2019年1月に創刊140周年を迎えた朝日新聞は、戦前・戦中・戦後を通じて撮影された写真や動画、約2000万点を保有している。これらの貴重な資料を有効活用するため、2010年には外販専用ウェブサイト「朝日新聞フォトアーカイブ」を立ち上げ、自治体や企業にデータを有料で提供している。

ウェブサイトに出されている写真や動画は現在、約340万点に上る。最新のニュースに関するものや、過去の資料を新たにデジタル化したものが加わり、年間約30万点のペースで増加している。約2000万点の過去の資料をデジタル化する作業で、特に優先しているのが災害や防災に関するもののデジタル化だ。

「過去の災害に関する写真や動画は、防災にも様々な形で活用できると思います。例えば、過去の浸水状況を見て、今後の対策に役立てることが考えらます。写真や動画以外にも、地図や写真を交えてわかりやすく解説したインフォグラフィックスの提供も行っています」

朝日新聞東京本社朝日新聞フォトアーカイブ次長(営業担当)の柏木和彦氏は、防災に関する資料の活用について、こう説明する。ウェブサイトではまず無料の登録を行い、キーワードを入れて検索すると、関連する写真や動画、インフォグラフィクスが表示される。必要なものについて購入を申し込めば、データが即日で提供される。

撮影された日付や場所、著作権の確認は、アーカイブで行っている。過去のものだけでなく当日発生したニュースの写真を提供できるのも、新聞社ならではのサービスだ。まだデジタル化されておらずウェブサイトに出ていない過去の資料も、電話やメールで問い合わせれば、保存資料の中から探し、デジタル化して提供する。

飛行機やヘリ、ドローンによる
空撮写真や動画も提供

近年は多数の大規模な災害が発生しており、防災に力を入れる自治体は多い。このためフォトアーカイブには、災害の写真や動画に関する自治体からの問い合わせが増加している。例えば、住民への啓蒙活動を目的とした広報や冊子の作成で「東日本大震災の写真を使いたい」といった依頼がある。

朝日新聞では、大規模な災害の発生時には空撮も行っており、上空から撮った写真や動画が豊富にあるのもアーカイブの特長だ。朝日新聞の航空基地は現在、羽田、伊丹、福岡の3空港にあり、小型ジェット1機とヘリコプター4機が空撮に使われている。近年は防振装置付きの動画撮影機材も搭載し、テレビ局と同レベルの動画撮影も可能になっている。

「大規模な地滑りも、地上で撮るのと上空から撮るのでは全く見え方が異なります。災害がどのように発生したかを知るには、上から見た方がわかりやすい場合があります。土砂崩れは上から見ると、土砂がどのように流れたのかが一目瞭然です。それらを分析すれば、今後の対策にも役立つはずです」(柏木氏)

空撮による写真や動画には、戦前のものも存在する。例えば、1933年に発生した三陸沖地震の動画を見ると、東日本大震災と同様の被害が生じていたことがわかる。これらはまだテレビ局がなかった時代に撮影されたもので、貴重な資料となっている。

2018年9月に発生した北海道胆振東部地震の際には、ドローンによる空撮も行った。ドローンは飛行機やヘリコプターより低い高度で撮影することができ、特定の地区の被災状況を、より詳細なレベルで把握できる。

ドローンによる撮影はここ数年で本格的に始めたもので、災害の発生時だけでなく復興状況の記録も行っている。例えば、2016年の熊本地震で被災した熊本城では、毎年ドローンによる撮影を続けている。

朝日新聞のニュースサイト「朝日新聞デジタル」で公開される動画は短く編集されているが、要望があれば、編集前の素材を提供することも可能だという。防災教育や地理学習に活かしてもらうため、今後は依頼に応じて、特定の地区でドローンによる撮影を行うサービスの開始も計画している。

北海道胆振東部地震では、ドローンからの空撮も実施している(左)。災害発生から60年を期に、伊勢湾台風のデータを充実させた(右)

防災展示会や啓発DVDへの
自治体による活用事例も

災害関連の写真や動画の自治体による活用事例では、これまでのところ、書籍や冊子、展示会への活用が多い。他には、防災啓発DVDへの利用もあり、ハザードマップや防災教育の教材など様々な活用法が考えられる。民間からは、「東日本大震災の動画を映画に使用したい」という申し込みも寄せられている。

「自治体は地方紙の素材を活用されることが多いと思いますが、私たちは広域で取材を行っており、地方紙にはないものも多数提供できます。また、防災の教材に動画や写真を取り入れれば、子どもたちにも興味を持ってもらえると思います」と、朝日新聞東京本社朝日新聞フォトアーカイブ担当部長の吉田耕一郎氏は話した。アーカイブでは現在も、膨大な過去の資料をデジタル化する作業を続けているが、2019年は伊勢湾台風から60年になることから、特に関連写真のデジタル化に力を入れている。

1959年に発生した伊勢湾台風の関連写真は、3000枚を超える。台風の脅威や壊滅的な被害を伝えるもののほか、被災児童の姿や復旧作業の様子、全国から寄せられた励ましの手紙など多様な写真が含まれる。「アーカイブへの登録は無料なので、関連自治体の方々には、ぜひ登録して見ていただきたい」(柏木氏)と言い、今後の防災に向けた資料の活用に期待している。

新聞に掲載されたインフォグラフィックも利用可能だ

 

朝日新聞フォトアーカイブへの

お問い合わせ


朝日新聞フォトアーカイブ
https://photoarchives.asahi.com
Tel:03-5541-8138
Mail:shashin@asahi.com

 

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