2019年4月号
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情報と技術で防災・減災

自助で災害に備える 課題は住民のアクションにつながる情報提供

月刊事業構想 編集部

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5年連続で、甚大な人的被害を出す豪雨災害に襲われている日本。毎年の教訓を生かし、避難情報の早めの提供や、自主避難などの取組がなされている。住民のアクションにつながる情報提供と、在宅で介護を受ける高齢者の避難が大きな課題だ。

豪雨のため、広島県江田島市では土石流が道路を分断し、復旧工事にも支障をきたした

日本を毎年のように襲う大災害。地震、台風、火山噴火と、バラエティに富んでおり、対策も一筋縄ではいかない。その中でも、ここ5年ほどでその重篤さが認識されだしたのが、豪雨が引き起こす災害だ。

2014年8月の豪雨から、広島市北部で生じた土砂災害は、1983年に島根県西部で生じた豪雨・土石災害以来の大きな人的被害を出したものとして注目を集めた。その翌年の2015年9月には、台風の影響で北関東から東北南部に降った豪雨で、鬼怒川などで堤防が決壊し、常総市を中心に大きな被害が出た。2016年には、台風10号に伴う豪雨で北海道から東北地方に大きな被害が出、岩手県岩泉町では高齢者施設の入居者が亡くなっている。そして記憶に新しい2017年7月の九州北部豪雨、西日本を中心に100人以上の死者を出した2018年7月豪雨と、毎年、雨による災害が発生している。

2018年7月豪雨の教訓

このような災害後、国は「次」に備えてより被害を小さくする方策を検討する。例えば、高齢者施設で入居者9人が亡くなった、2016年の台風10号の被害後には、水防法と土砂災害防止法の改正がなされた。浸水想定区域などのリスクの高い地域に立地する高齢者施設などに、災害時の避難計画策定を義務付けるものだ。

2018年12月には、「平成30年7月豪雨を踏まえた水害・土砂災害からの避難の在り方について」の報告が、内閣府の中央防災会議防災対策実行会議のワーキンググループから提出された。これまでも繰り返し提言されてきた、平時からの災害情報収集の重要性や早期の避難に加え、今回の災害から新たに得られた知見に基づく提案もある。

まず、2018年7月の豪雨・土砂災害で注目されたのは、人々に避難行動をとらせる難しさだ。ここ数年で集中した水害の経験を活かし、被災地の自治体はハザードマップを作成し公開していた。避難情報も早い段階で発令され、情報提供のプロセスはかなり改善されていた。それでも、避難を決断できない住民がおり、高齢者を中心に人命被害が発生した。

居住地のリスクを把握していない人に正常性バイアスがかかれば、逃げ遅れの原因になる。いかにして危険を察知させ、自分の身の安全を確保する行動をとらせるか。これが課題になる中で、注目を集めたのが、愛媛県大洲市三善地区だ。

同地域は水害が多く、過去の被害の記憶を親から子に語り伝えるなど、水害への意識が高かった。最近の豪雨被害の増加を受け、同地区では2016年に内閣府の「災害・避難カードモデル事業」に参加していた。これは、三善地区自主防災組織が主体となり、ワークショップを通じて住民自らが「災害・避難カード」を作成するというもの。事業への参加を通じて、国土交通省などの専門家の支援や助言を得ることもできた。その後、災害・避難カードを基に、避難訓練と意見交換を実施し、災害発生時は地域の全戸がこのカードを持つ状態だった。さらにこの地区では、平時から災害時の高齢者への支援方法を検討し、要配慮者と支援を担当する人を関連付けていた。

2018年7月豪雨の際、大洲市は全域に避難指示が出、三善地区でも避難所の公民館が浸水する被害を受けたが、住民は公民館が浸水する前にそれを察知して高台の施設に全員で移動し、死者もけが人も出さなかった。この地区の事例から、人命を守るために、住民主体の取組が有効であること、その際専門家による支援が有効に機能することが分かった。国では今後、地域住民の自助・共助の取組をさらに後押しする施策を計画している。具体的には、市町村へのアドバイザーとして働ける専門家のリスト化を進め、市町村が求めに応じて専門家に相談できる態勢を固める考えだ。

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