ホテル業界の常識、IoTで塗り替える 省人化に挑むベンチャー

ホテル・旅館業界は、訪日外国人客の増加により好景気に湧く一方で、人手不足が深刻だ。IoTなどのテクノロジーを駆使し、宿泊業の人手不足を解決するサービスを展開するand factoryの小原崇幹代表取締役社長に、宿泊施設の未来像を聞いた。

小原 崇幹(and factory 代表取締役社長)

テクノロジーで宿泊業界を変える

and factoryは宿泊業界で注目を集めるベンチャーだ。IoT機器をフル活用したスマートホステル『&AND HOSTEL』を全国で運営するほか、2018年3月には宿泊管理システム『innto(イントゥ)』、4月には客室設置型タブレットサービス『tabii(タビー)』をリリース。導入件数を急速に伸ばしている。

2014年に設立された同社は、もともと大手出版社と協業した漫画アプリなど、エンターテインメント領域のスマホアプリが主力事業だった。なぜ、異分野の宿泊業界に参入したのか。代表取締役社長の小原崇幹氏は「宿泊業はテクノロジーによって変えられる領域が多分にあると感じました」と話す。

「宿泊施設のビジネスモデルは戦前からほとんど変わっていません。多くの施設の収益源は、宿泊費と飲食、簡単な物販といった程度です。しかし、長時間をその部屋で過ごすことを考えると、部屋自体のエンターテインメント性を高めることなどで、利益率を高めるチャンスはあるはず。それを、IoTを含むテクノロジーの力で顕在化させていきたいと考えています。また、宿泊施設は直近の課題として人手不足やインバウンド対応などを抱えており、特に地方部ほど事態は深刻です。ここにもテクノロジー活用の余地があります」

客室設置型タブレットサービス『tabii』

宿泊運営業務管理システム『innto』

宿泊施設の省人化を推進

この構想を実現するために、and factoryは現在『tabii』と『innto』という2つの宿泊施設向けサービスを展開している。

客室設置型タブレットサービス『tabii』は、施設の館内情報や地域の観光・グルメ情報、音楽・お笑いなどの動画コンテンツなどを閲覧することができる。さらに、宿泊約款や施設案内、各種お知らせを電子化することで、客室のペーパーレス化を実現する。Q&Aチャットボットも搭載し、よくある質問は自動回答することでスタッフの手間を削減。また、多言語化にも対応済みだ。導入費や使用料は完全無料であり、and factoryは広告やコンテンツ配信でマネタイズをしている。

宿泊運営業務管理システム『innto』は、予約や販売価格、料金精算、顧客情報などが一元管理できる。tabiiとの連携機能を持ち、宿泊者の年齢や性別に応じてtabii上のグルメ情報や広告を切り替えることで、高精度なマーケティングが実現する。

「宿泊施設の導入メリットは、客室価値と生産性の向上です。事業を始めてまだ半年程度ですが、導入施設からは『チラシなどの印刷が不要になりコストを削減できた』『(省人化で)採用活動を抑えることができた』といった声を頂いています」と小原氏。

2019年にはtabiiに内線電話システムを搭載する予定で、将来的にはビデオ・オン・デマンドサービスも提供したいという。「これらが実現すれば、電話もテレビも客室にはいらなくなり、宿泊施設のコストが削減できるでしょう。このほかにも、ルームサービスやお土産購入の機能も検討しています」

小原氏は「宿泊施設には省人化の余地がまだまだ沢山ある」と強調する。例えば客室清掃作業は、清掃員が1部屋ずつチェックアウトを確認するという非効率な方法が一般的だ。「チェックアウト情報を清掃員に通知するシステムを採用しているのは都心の一部のホテルだけで、地方ほど人海戦術に頼っています。このような、宿泊業界の内部からでは気づきにくい既成概念や慣習を、外部視点を持つ私達のような会社がアイデアを出して変えていくべきだと思います」

ホテル・旅館業界はインバウンド需要で活況を呈する一方で、人手不足が深刻だ(写真はイメージ)

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