天文学・経済学も「未来予測の技法」 新しい未来学を考える
これから、どのようなテクノロジーが実現し、それは社会をどのように変えていくのか――。昨今、様々な未来予測が行われているが、それは、より良い未来を手にするための試みでもある。当連載では、長期スパンのテクノロジー予測を軸に、未来の社会を見据えた事業創出の可能性を考察する。
2030年、2050年、2100年、人類はどのような未来社会を実現しているのでしょうか。昨日や今日の延長上にある数年先の近い未来だけでなく、遠い未来の可能性を見ることができれば、先の未来を見据えた新たな事業の構想を立ち上げることや、世の中の変化が追い風になるような事業の構想を生み出すことができるはずです。
未来社会デザインは、そうした未来への見通しを、一部の天才や先見の明がある人物だけでなく、多くの人で共有し、共に実践することを目指した取り組みです。
図1 未来学の歴史
人類は言語を手に入れると同時に、未来を考える力(現実には無いものを想像する力)を手に入れた。
古代から行われてきた未来予測
未来への見通しを持つ試みは、現代だけでなく古代から人類が取り組み続けてきたテーマでした(図1参照)。
今から5000年前の紀元前3000年には、メソポタミアで月と太陽の運行をもとにした現存する最古の暦が作られています。古代の天文学は、未来の季節を知るために生まれた未来を見通すための学問でした。
また、16世紀に生まれた経済学は、産業革命が進展する18世紀にアダム・スミスによって理論化され、資本主義社会における社会の行く末を見通す未来予測として発展していきます。
20世紀に入ると、地球環境への悪影響から環境問題への関心が高まり、コンピューターを用いた様々なシミュレーションが行われるようになりました。現在でも気候変動の予測モデルは各国で取り組まれ、JAMSTEC(海洋研究開発機構)の地表気温変化シミュレーションでは2100年までの気候変動の未来予測を見ることができます。
人類は、時代に応じて様々な未来の見通し方を生み出してきました。それは、未来の予言者になるためではなく、先を見据えた取り組みによってより良い未来を手にするための試みです。そして、近年はテクノロジーの重要度が高まり、テクノロジーの未来への見通しを立てる試みが行われてきています。
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