日本女子大 「学び直し」の盛衰を超え、10年続くリカレント教育

結婚や出産で退職した女性に、技能習得と再就職の機会を与えるため始まったプログラム。女性の活躍を望む機運を受け、社会から注目されるようになった。本当に必要な支援とは何か、政策立案の基盤を提供する場ともなっている。

坂本 清恵(日本女子大学生涯学習センター 所長)

日本女子大学の女性のための再就職支援プログラム「リカレント教育課程」は、2007年9月に開講し、10年以上にわたって活動を継続している。当初は文部科学省の「社会人の学び直しニーズ対応教育事業委託」に採択されて始まったものだが、事業終了後は大学の生涯学習センターで教育を続けた。リーマンショックと東日本大震災という、企業の求人が軒並み落ち込んだ時期を乗り越え、2017年6月には内閣府男女共同参画局から「女性のチャレンジ支援賞」で表彰されている。

同教育課程は、大学卒業後に就職し、育児やキャリアチェンジなどで離職した女性向けの1年間のプログラムだ。英語やITの他、企業会計、内部監査や労働法など、企業で働くうえで必要な知識をアップデートする。

企業人としての再教育を提供

リカレント教育課程は、日本女子大学の目白キャンパスで開講される昼間課程だ。応募資格は「4年制大学を卒業し、就業経験のある女性」。これまでの入学者の入学時平均年齢は40.1歳、40代を中心に、20代から60代の女性が入学している。既婚者と未婚者の割合は、おおよそ7対3だ。日本女子大学の卒業生以外にも門戸を開いており、開講から2017年度までの入学者504人のうち、7割近くが他大学の出身者だった。

IT技能・英語力と面接の入学試験があり、2018年度の入学金・授業料は26万円。4月から翌年3月までの1年間の講座で、修了要件は14科目28単位、294時間以上を履修する。授業のカリキュラムには、英語、日本語コミュニケーション、ITリテラシーの他、自身が希望する就職先に合わせた科目を選択する。簿記、貿易実務、社会保険労務士、消費生活アドバイザーなどの資格取得を目指した講座もある。科目履修生として、日本女子大の授業を受けることも可能だ。

重視しているのは、キャリアマネジメントの授業。受講生の「エンプロイアビリティ(企業で働く力)」を再開発し、働くことについて見つめなおす。再就職した後の家族とのかかわりなども、じっくりと考える。それと共に、求職のための実務的なスキルを身に着ける特訓をする。具体的には、履歴書・職務経歴書の作成支援や、面接対策などだ。

夏休み期間には、提携している企業のインターンシップ・プログラムがある。秋からは、リカレント教育課程専用の求人サイトのアカウントを付与し、企業説明会も開かれ、再就職に向けた動きが本格化する。また、3月の修了後も、再就職活動支援や、企業説明会などのイベントに参加できる。

ゴールを再就職としていることから、教育課程にとって企業との協力体制構築は必須だ。難しい状況もあったが、近年は西友、大同生命保険、野村證券などと連携して、企業内の専門家による講演や、インターンシップの機会などを確保している。2018年5月には、東京商工会議所と覚書を締結し、東京商工会議所の研修講座を特別価格で学べるようにしたり、インターンシップや再就職に関する支援を取り付けたりしている。

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